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<荒井幸博のシネマつれづれ>前科者

2022年2月11日
岸善幸(最上町出身)監督作品

 元受刑者の更生を支援する保護司を始めて3年、阿川佳代(有村架純)はやり甲斐を感じ元受刑者らと向き合っていた。

<荒井幸博のシネマつれづれ>前科者

 保護司とは法務大臣から委嘱された非常勤の国家公務員だが、報酬は一切ない。そのため佳代はコンビニで働いて生活費を稼いでいる。
 そんな彼女が担当する工藤誠(森田剛)は工場で真面目に働き、順調な更生生活を送っていた。佳代も誠が社会人として自立する日をともに祝おうと楽しみにしていた。
 そんな誠が保護観察終了目前に忽然(こつぜん)と姿を消す。同時に連続殺人事件が発生、容疑をかけられた誠は再び追われる立場になってしまう。
 なぜ誠は社会復帰あと一歩のところで姿を消してしまったのか?なぜ佳代は若くして保護司という仕事に人生を捧げるようになったのか?。捜査が進むにつれ、これらの謎が徐々に氷解していくのだった――。

 原作はビッグオリジナルで連載中の香川まさひと原作・月島冬二作画の同名漫画。 メガホンを取ったのは「二重生活」「あゝ、荒野」で数多くの映画賞を受賞した最上町出身の岸善幸監督(57)で、脚本も担当。
 岸監督にインタビューしたところ、「映画は配役でほぼ決まる。有村さん、森田さんなどチカラのある俳優さんによって素晴らしい作品にしてもらいました」と謙遜していた。
 同時に「親の虐待で亡くなる子どものニュースに触れると、そこに誰かがいてくれたら防げたのではと思う。虐待をする人間、受ける人間、どういう心理状態なのか、その一歩先を想像して欲しい」と熱く語っていた。

  ひたむきな佳代役の有村と、更生に励む元殺人犯を演じた森田の演技には前半から心を揺さぶられ、ラスト近くは白眉(はくび)。
 共演の石橋静河、宇野祥平、磯村勇斗、マキタスポーツ、若葉竜也、木村多江らも素晴らしい。

 県内ゆかりの人物では、公開中の「ノイズ」を小説化したのは山形在住作家の黒木あるじさんということを最後に付記しておく。


<荒井幸博のシネマつれづれ>前科者
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜19時)を担当。