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《セピア色の風景帖》第158回 市立一小旧校舎

2022年1月14日
 歴史的な建物の姿を後世に残そうという際、残念ながら、その来歴を踏まえて丁重な保存を心がけることは極めて少なくなっているように思う。
《セピア色の風景帖》第158回 市立一小旧校舎

 大半は建物のクラシックな外観を利用しての集客目的の施設に改造されるか、手がける者の意図を実現させるための単なる素材として扱われているのではないか。

 現在「まなび館」と称される山形市立第一小学校旧校舎は、残念ながらそれに属するだろう。
 第七小学校旧校舎のように完全撤去を免れただけでもマシとの見方もあろうが、塗りたての壁、剥がされ新材に張り替えられた床に、歴史への繊細な配慮は微塵も感じ取れない。
 予算規模は10億円超、工期は3月末までと聞いているが、果たしてどんな姿になるのか。

 一小旧校舎は大正末年に着工され、昭和2年には校舎としての利用に先立って市が主催する「全国産業博覧会」の会場としてデビューした。
 当時は中庭に大きな噴水をしつらえるなど、学校としては過剰なほどの装飾も施されたと聞く。まさに市の文化的シンボルとしての誕生だったのである。
 以来90余年――。壁のくすみ、床の傷さえ歴史の重みだと理解する人がこの建物の保存を企画する関係者の中に1人でも欲しかった。(F)