医学のうんちく/mRNA医薬
2021年11月12日
ファイザー社とモデルナ社のコロナワクチンが「メッセンジャーRNA(mRNA)」を利用して開発されたということをご存知ですか?
遺伝情報から作成
mRNAワクチンとは、ウイルスの遺伝情報を基に作ったワクチンで、接種すると体内で人工的に新型コロナのたんぱく質を作り出します。
配列さえ分かればどんなたんぱく質でも設計できるのがmRNAの特徴で、広い標的(疾患)に対応できるほか、コロナワクチンでの開発に見られるように短時間で設計できるというメリットがあります。

発想は昔から
mRNAが医薬品として用いられるのは今回が初めて。発想は昔からありましたが、体内で不安定なことや、体が外来性のmRNAを異物と認識して異常な免疫反応を誘発することから実用化には至りませんでした。
それが最近になり、脂質ナノ粒子(LNP)などでmRNAを包むことで副作用を抑えることが可能になったのです。
ただLNPは炎症反応を引き起こしやすく、標的疾患や対象臓器によっては使用が困難です。mRNAワクチンはLNPを使用しているため、接種後の炎症反応が強いと考えられます。
ワクチンでの応用
現在、mRNA医薬の実用化に向けて最も開発が進んでいるのは、mRNAワクチンとしての応用です。感染症ワクチンとがんワクチンはいずれもmRNAからのたんぱく質発現によって抗原を提示する点で共通しており、2大適応と考えられています。
エイズ、インフルエンザ、ジカ熱などを対象とした感染症ワクチンや腎がん、肺がんなどを対象としたがんワクチンが開発されています。
心虚血疾患治療にも
ワクチン以外では、成長因子のmRNAを用いた心虚血疾患治療薬が開発されています。


山形徳洲会病院院長
笹川 五十次
●(ささがわ・いそじ)1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医、日本腎臓学会認定腎臓専門医。
笹川 五十次
●(ささがわ・いそじ)1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医、日本腎臓学会認定腎臓専門医。