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泌尿器講座/腎盂腎炎

2021年8月27日
 腎盂腎炎(じんうじんえん)とは、細菌が尿道から膀胱に侵入し、さらに尿路を逆行して腎盂で感染をひき起こす病気のことです。

単純性と複雑性

 前回お話しした膀胱炎(ぼうこうえん)と同様、腎盂腎炎も基礎疾患がなく、排尿障害や尿路の閉塞を伴わない単純性と、基礎疾患や排尿障害、尿路の閉塞を背景にした複雑性があり、単純性腎盂腎炎は女性に発症します。症状は感染した側の腎臓のある側腹部や背部の痛みと、38度を超える発熱です。

泌尿器講座/腎盂腎炎

血液検査で重症度評価

 腎盂腎炎では細菌が血液中に入り込むため、早急に重症度を評価する血液検査が必要です。
 炎症反応の軽い単純性腎盂腎炎の場合は、経口の抗生物質を1~2週間内服することで治ることが大半ですが、炎症反応が強い場合は入院のうえ、点滴による抗生物質の投与と全身管理が必要になります。

敗血症の恐れも

 尿管閉塞を伴う腎盂腎炎では、腎盂内に溜まった尿に細菌が増殖し、重篤な敗血症に陥る危険があります。
 その場合は抗生剤投与だけでなく、閉塞している尿管に「尿管ステント」という特殊なチューブを埋め込んだり、背部の皮膚から直接腎臓に針を刺して「腎瘻(じんろう)」というチューブを腎臓に埋め込んだりして、腎盂内の細菌尿を体外に排出させる必要があります。

尿路結石を合併すると

 ご年配の女性では尿中カルシウムが増加し、尿路結石ができやすくなるのでご注意を。尿管結石により尿管が閉塞したところに腎盂腎炎を合併した場合、急いで処置を行わないと致命的な経過をたどることがあります。

かかりつけ医に相談を

 側腹部や背部の痛みを伴う発熱は腎盂腎炎かもしれません。様子を見ずにかかりつけの先生に相談してみましょう。


泌尿器講座/腎盂腎炎
いしい腎泌尿器科クリニック院長
いしい腎泌尿器科クリニック院長 石井 達矢
(いしい・たつや)1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。同大附属病院、市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士、日本泌尿器科学会認定専門医・指導医、日本医師会認定産業医。