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泌尿器講座/膀胱炎

2021年7月23日
 今回は膀胱炎のお話です。

単純性と複雑性

 膀胱炎は、腸内細菌などが尿道から膀胱に侵入することで炎症をおこす病気です。症状は排尿時の痛み、残尿感、頻尿、血尿などです。 
 膀胱炎には、基礎疾患がなく、排尿障害や尿路の閉塞を伴わない単純性と、基礎疾患や排尿障害を背景とした複雑性があります。単純性は女性にだけ発症し、男性の膀胱炎は基本的に複雑性となります。

泌尿器講座/膀胱炎

検査と治療

 膀胱炎の検査には内視鏡などは必要なく、尿検査で細菌や白血球が多数認められれば膀胱炎と診断できます。
 単純性の場合、腸内細菌に効果のある抗生物質を5~7日程度内服することで治癒します。症状が軽くなっても薬を飲み切ることが重要です。複雑性の場合は抗生物質の内服だけでなく、排尿障害を認めればその治療も並行します。

抗生物質の副作用

 注意が必要なのは抗生物質の適正な使用で、抗生物質は全身に薬効が及ぶため腸内細菌のバランスが壊れて下痢を起こしたり、女性では膣内の細菌にも影響が出て陰部のかゆみやおりものの増加などを引き起こすことがあります。
 また近年は、抗生剤の乱用で「薬剤耐性菌」が増加し、尿路感染症の治療が難渋することも多くなっています。

専門医に相談を

 よく患者さんから「次に備えて余分に抗生剤を処方して欲しい」と要望されることがありますが、医師の診断を待たずに症状だけで膀胱炎と判断し、不要な抗生剤を内服するのは危険です。
 また症状が治まると内服をやめる方も多いため、膀胱炎の原因菌が残存し、すぐに再発してしまいます。
 このような事態を避けるためにも、「膀胱炎かな」と感じたら泌尿器科で適切な診断と治療を受けましょう。


泌尿器講座/膀胱炎
いしい腎泌尿器科クリニック院長
いしい腎泌尿器科クリニック院長 石井 達矢
(いしい・たつや)1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。同大附属病院、市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士、日本泌尿器科学会認定専門医・指導医、日本医師会認定産業医。