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<荒井幸博のシネマつれづれ> いのちの停車場

2021年5月28日
自分らしい生き方とは

 田村正和の77歳での訃報に衝撃が走るなか、田村の1歳下で、デビュー62年を迎えた吉永小百合が122本の映画出演で初の医師役に挑んだ「いのちの停車場」が21日から公開されている。

<荒井幸博のシネマつれづれ> いのちの停車場

 東京の救命救急センターで多くの命を救ってきた医師・白石咲和子(吉永)は、ある事件がきっかけで病院を追われ、年老いた父親(田中泯)が暮らす故郷・金沢に帰って在宅医療を行う「まほろば診療所」で働くことになる。
 この診療所では、院長(西田敏行)、看護師の麻世(広瀬すず)らが“患者の生き方を尊重する治療”を最優先に掲げ、咲和子はこれまで経験してきた医療とは異なる考え方に戸惑う。
 だが前職場の部下だった野呂(松坂桃李)も加わり、小児がんと闘う女の子と両親、末期がんで最期を郷里で過ごすことを選択した元官僚、重篤な妻を老々介護する夫、末期の肺がんを患うが治療を拒否し敢然と生きぬこうとする芸者など、自分らしい生き方を模索する患者たちに向き合うことで自らも大きな気づきを得ていく。
 そんな矢先、最愛の父親が倒れ、過酷な痛みに耐えられず安楽死を咲和子に懇願するようになるのだった――。

 医師の南杏子の同名小説を成島出監督が映画化。吉永、田中、西田らのベテランから、広瀬、松坂らの若手まで各世代を代表する名優たちが絶妙のコラボレーションをみせる。
 吉永の父を演じた田中は吉永より3日早く生まれただけの同い年だが、父娘として違和感がないのは吉永が驚異的に若さと美貌を保っていることによるのだろう。

 吉永の親友・樹木希林が3年前に75歳で旅立ち、日活時代からの仲間・渡哲也も昨年8月に78歳で永眠。吉永と40年来タッグを組み、本作でも製作総指揮を執っていた岡田裕介東映会長が昨年11月に71歳で急逝。
 咲和子は、相次いで大切な人を見送ってきた吉永が呼び寄せた役だったのかもしれない。


<荒井幸博のシネマつれづれ> いのちの停車場
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(木曜12時)を担当。