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<荒井幸博のシネマつれづれ> ミナリ

2021年3月12日
韓国系移民一家の物語

 1980年代、アメリカンドリームを求めて渡米した韓国人一家が、理不尽な運命に翻弄されながらもたくましく生きる姿を描いた感動作。第36回サンダンス映画祭でグランプリと観客賞をダブル受賞、先日発表の第78回ゴールデングローブ賞では外国語映画賞を受賞した。

<荒井幸博のシネマつれづれ> ミナリ

 農業で成功することを夢見るジェイコブは妻のモニカ、長女のアン、心臓を患う長男デビッドを連れて韓国からアーカンソーの田舎町に移り住むことを決意する。
 だが来てみれば、住む家はボロボロ、土地は荒れ放題、水の確保にも事欠く有様。夢とロマンを追い求める夫と、安定した生活を望む妻は子どもたち2人の前で衝突を繰り返す。
 子どもたちの世話を任せようと韓国から妻の母スンジャを呼び寄せるが、この祖母がまた型破りで、孫への手土産は花札、料理はできないといった具合。最初のうちは口汚い祖母を子どもたち「韓国臭い」と嫌う。

 祖母に惹かれていくようになった矢先に、祖母が倒れてしまう。好転する兆しのない農業に固執する夫とカリフォルニアに移住しての新たな暮らしを主張する妻との対立が決定的になった時、一家に思わぬ事態が降りかかって来るのだった――。

 タイトルの「ミナリ」とは、野菜のセリを表す韓国語。祖母が韓国から持ってきたセリの種を川べりにまいたところ、他の作物と違ってセリだけは簡単に育ち、いつまでも根付いた。つまりセリは米国で根を張った韓国系移民の象徴であり、祖母のたくましさや優しさも表わしているのだ。
 本作の米国での反応は、韓国系移民の特殊な物語とは映らず、「まさに我々の物語だ」と〝合衆国”ならでは受け止め方だったとか。
 全米でヒットを記録、アカデミー賞でも有力候補となるだろう。特に祖母を演じたユン・ヨジョンは助演女優賞の有力候補に躍り出た。
 本邦では家族設定、音楽など、「北の国から」が想起されそうだ。


<荒井幸博のシネマつれづれ> ミナリ
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(木曜12時)を担当。