泌尿器講座/飲水過多と夜間多尿
2021年1月22日
寒くなり、夜中のトイレの回数が増えてお困りの方も多いでしょう。こうした「夜間頻尿」の原因は様々ですが、今回は原因の一つ、水分の摂りすぎによる「夜間多尿」についてのお話です。
健康番組の落とし穴
テレビの健康番組などでは「脳梗塞や心筋梗塞を防ぐには血液をサラサラに」「そのために寝る前にコップ1杯の水を」などと勧められます。
確かに、高熱時や夜遅くに飲酒した時などは脱水症状が起きやすく、十分な水分摂取をしないと血液の粘稠度(血のドロドロさ)が上がり脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まるのは事実です。

水の飲みすぎはNG
では健康な日常生活を送っている場合はどうでしょう?多くの泌尿器科医が引用する文献(※)を御紹介します。
健康な21人(うち65歳以上は11人)を対象に1日2リットル以上の飲水をしてもらい、その前後で血液の粘稠度に変化がないかを調べたところ、粘稠度に変化はなかった一方、全員の夜間の排尿回数は増加しました。
つまり、健康な人がいくら水を飲んでも血液がサラサラにならないばかりか、夜間多尿→夜間頻尿の原因になるのです。
危険なのは脱水
脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めるのはあくまで脱水で、必要以上に水を飲んでも予防にはならないということです。
健康な人は毎朝しっかり水分を摂れば十分で、寝る前に無理に摂ってもすぐにおしっこになってしまうだけで、血液はサラサラになりません。
専門医に相談を
泌尿器科医である私は、外来にいらっしゃる夜間頻尿の患者さんの排尿日誌を分析し、そのことを通じて飲水に対する誤った認識を改めていただく日々を送っています。
◇
夜間頻尿でお困りの方は、お近くの専門医に御相談されることをお勧めします。
※ Sugaya K, et al. Int J Urol. 14: 470-472, 2007.


いしい腎泌尿器科クリニック院長 石井 達矢
●(いしい・たつや)1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。同大附属病院、市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士、日本泌尿器科学会認定専門医・指導医、日本医師会認定産業医。
●(いしい・たつや)1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。同大附属病院、市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士、日本泌尿器科学会認定専門医・指導医、日本医師会認定産業医。