泌尿器講座/過活動膀胱(下)
2020年12月25日
今回は過活動膀胱の薬物療法のお話です。
以前の主流は抗コリン剤
ひところまで、薬物療法の中心は「抗コリン剤」でした。膀胱には排尿筋という筋肉があり、過活動膀胱では排尿筋が自分の意志に反して収縮することで排尿が促されます。
排尿筋が収縮するのは、アセチルコリンという神経伝達物質がムスカリン受容体と結合することが原因です。
抗コリン剤は、アセチルコリンがムスカリン受容体に結合するのを阻害する飲み薬で、結果として膀胱の異常な収縮を抑えてくれます。

副作用もあります
ただ副作用として喉の渇き、便秘などが報告されているほか、前立腺肥大症や神経因性膀胱などで排尿障害がある場合は残尿が増加することがあり、定期的に超音波などで残尿を調べます。
β3作動薬も有効
尿を膀胱に溜めている時(蓄尿期)には、膀胱の拡張をコントロールするノルアドレナリンという神経伝達物質が放出され、それがβ3受容体に結合することで弛緩した膀胱に尿が溜まります。
β3作動薬はβ3受容体に結合してノルアドレナリンによる膀胱の弛緩作用を増強する飲み薬で、膀胱容量が増大することで過活動膀胱の症状を改善します。
ボトックスが保険適用
これらの飲み薬を12週間以上使っても改善しない難治性過活動膀胱に対し、2020年4月からボツリヌス毒素(ボトックス)と呼ばれるたんぱく質を使った治療が保険適応になりました。
尿道から内視鏡を挿入して膀胱の粘膜にボトックスを注射する治療法で、筋肉の緊張を和らげます。ボトックスは美容医療でシワを伸ばす目的などに使われています。
高い効果が認められ
排尿が困難になるといった副作用も報告されていますが、高い効果を認める治療法です。


いしい腎泌尿器科クリニック院長 石井 達矢
●(いしい・たつや)1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。同大附属病院、市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士、日本泌尿器科学会認定専門医・指導医、日本医師会認定産業医。
●(いしい・たつや)1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。同大附属病院、市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士、日本泌尿器科学会認定専門医・指導医、日本医師会認定産業医。