徹底して山形に密着したフリーペーパー

<荒井幸博のシネマつれづれ> 老後を描く2作品

2020年11月13日
「それから」を楽しもう!

 3月からのコロナ禍で停滞していた映画界が、「鬼滅の刃」の爆発的ヒットでにわかに活気づいている。
 「鬼滅」ほどの派手さはないが、11月6日から公開されている「感謝離 ずっと一緒に」と「おらおらでひとりいぐも」もお勧め。2作品とも長年連れ添った伴侶を失くした老人のその後の生き様を描くという点で共通しているが、テイストは異なる。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 老後を描く2作品

 「感謝離」の主人公は笠井謙三(尾藤イサオ)。銀行を定年退職して妻・和子(中尾ミエ)と仲睦まじく暮らしていたある日、和子が脳梗塞で倒れ、数年の施設暮らしの末、自宅に戻ることなく他界してしまう。
 数カ月後、和子の遺品整理に手をつける謙三は、在りし日の和子に想いを巡らしながら感謝の言葉をかけて段ボールにしまい込むなかで、徐々に前を向いて歩み出そうとしていくのだった。
 尾藤(76)と中尾(74)はそれぞれ「悲しき願い」「可愛いベイビー」いう洋楽カバーヒット曲を持つJポップ界の草分けで、60年来の友人。それだけにオシドリ夫婦役にはピッタリ。
 メガホンをとった小沼雄一監督は、2015年公開の「空人」で天童市若松寺で主なロケを行っっており、山形には馴染みの深い監督ということを付記しておく。

 「おらおら」は、やはり長年連れ添った夫に先立たれた75歳の桃子(田中裕子)が主人公。笑顔のない孤独な日々を送っていたある日、“心の声(寂しさたち)”3人が「オラはオメエだ」と音楽にのって陽気にあらわれ、桃子を励ますのだった。いつしか桃子は笑顔を取り戻し、前向きに生きていく意欲を取り戻していく。
 若き日の桃子に蒼井優、夫に東出昌大。心の声を濱田岳、宮藤官九郎、青木崇高が演じる。沖田修一監督によるユーモラスでファンタジックな人間賛歌。

 団塊の世代も古希を超えた。切実で身近な「老後」を重くて暗いものと捉えるのではなく、「それからを楽しもう」と思わせてくれる2作品だ。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 老後を描く2作品
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(木曜12時)を担当。