医学のうんちく/男性ホルモンについて
2020年11月13日
男性ホルモン(テストステロン)は、加齢に伴い低下します。血中の男性ホルモンの値は、若年健康男性と比べると60歳代の19%、70歳代の28%、80歳代の49%に低下を認めます。
低下すると合併症も
男性ホルモンの低下はメタボリック症候群、糖尿病や心血管疾患などを招きやすく、死亡率の上昇も指摘されています。
それ以外にも、うつ病、認知症や筋肉喪失などの発症率が増加することも報告されています。
京都大の研究チームが2014年に482人の高齢男性を対象に男性ホルモン値と転倒リスクを調査したところ、ホルモン値が低いほど転倒リスクが上昇していたほか、うつ病を合併すると転倒リスクがさらに約3.5倍上昇しました。

有効なホルモン補充療法
ホルモン低下に対してはホルモン補充療法が効果的です。英国マンチェスター大の研究チームが10年にホルモンの低下した虚弱高齢男性274人を対象に男性ホルモンを補充したところ、歩行に関する筋力の上昇、脂肪量の減少、身体機能の改善を認めました。
もっとも、国内で承認されているホルモン製剤は持続性注射剤と一般用医薬品の軟膏だけで、気軽に使える環境にはありません。
運動も効果的
ホルモン補充法以外で
は運動の効果も報告されています。
立命館大の研究チームは14年、若年男性6人と高齢男性13人を対象として12週間の運動負荷を行い、前後の筋肉内男性ホルモン量を測定しました。若年男性と比較すると高齢男性での含有量は低下していましたが、高齢男性では運動負荷後の増加を認めました。
やりすぎはNG
適度の運動はホルモンの増加に有用なようですが、やりすぎは「運動ストレス性低テストステロン症」を招き、逆にホルモンの低下を引き起こすので注意が必要です。


山形徳洲会病院長
笹川 五十次
●(ささがわ・いそじ)1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医、日本腎臓学会認定腎臓専門医。
笹川 五十次
●(ささがわ・いそじ)1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医、日本腎臓学会認定腎臓専門医。