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泌尿器講座/前立腺肥大症(下)

2020年10月23日
 前立腺肥大症に対処する薬としては「α1ブロッカー」「5α還元酵素阻害薬」「PDE5阻害薬」の3種類が承認されています。

α1ブロッカー

 まずα1ブロッカーですが、前立腺部尿道にはα1受容体と呼ばれる交感神経の受容体が多く分布しており、尿道の平滑筋という筋肉の緊張・収縮に関わっています。この神経をブロックして尿道の抵抗を下げ、尿を出やすくする薬です。
 前立腺肥大症に伴う排尿困難の薬として最も多く使われており、ジェネリック医薬品(後発医薬品)も多数発売されています。

泌尿器講座/前立腺肥大症(下)

5α還元酵素阻害薬

 前立腺は男性ホルモンの影響を受けて大きくなります。前立腺が大きくなると、尿道を物理的に圧迫したり、膀胱を押し上げてスムーズな排尿ができなくなってきます。
 5α還元酵素阻害薬は前立腺内に入る男性ホルモンをブロックして前立腺を縮小させる効果があり、前立腺が小さくなることで尿道の抵抗を下げてスムーズな排尿ができるようにします。

PDE5阻害薬

 PDE5阻害薬は血管の平滑筋を緩めることで組織への血流や酸素供給量を増やし、血のめぐりが良くなることで組織障害を改善したり、炎症を抑えて排尿時の様々な症状を改善するとされています。
 また、尿道や前立腺、膀胱頸部でも平滑筋を緩めることで尿道の抵抗が軽くなり、尿を出しやすくします。

専門医に相談を

 これら3つの薬はどれも有効性が高く、副作用もマイルドで飲みやすいのが特徴です。ひとくちに前立腺肥大症といっても前立腺の大きさや重症度も様々で、患者さんによって適切な薬を選ぶのは大切なこと。おしっこの出方で気になることがあれば、最寄りの泌尿器科を受診し、専門医に相談しましょう。


泌尿器講座/前立腺肥大症(下)
いしい腎泌尿器科クリニック院長
いしい腎泌尿器科クリニック院長 石井 達矢
(いしい・たつや)1999年(平成11年)山形大学医学部卒業。同大附属病院、市立病院済生館、公立置賜総合病院勤務などを経て2020年5月いしい腎泌尿器科クリニックを開業。医学博士、日本泌尿器科学会認定専門医・指導医、日本医師会認定産業医。