徹底して山形に密着したフリーペーパー

<荒井幸博のシネマつれづれ> 浅田家!

2020年10月9日
家族の大切さと写真の重み

 ユニークな家族写真で知られる写真家・浅田政志の実話を基に、「湯を沸かすほどの熱い愛」の中野量太監督が二宮和也を主演に据えてメガホンを取った人間ドラマ。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 浅田家!

 三重県津市で父(平田満)、母(風吹ジュン)、兄(妻夫木聡)と暮らす浅田政志(二宮)は子どものころから写真を撮るのが大好き。被写体はもっぱら家族だった。
 東京の写真専門学校に進んだ政志が卒業制作に選んだのも家族写真。10才の時の出来事を再現した家族の情けない写真だったが、この作品が学校長賞を受賞する。
 卒業後は地元でパチスロと釣り三昧の毎日を送るが、3年後に一念発起、写真と向き合うように。被写体はやはり家族。消防士、極道の妻、戦隊ヒーローなど様々なコスプレをまとわせ撮影したユニークな写真が写真賞の最高峰「木村伊兵衛写真賞」を受賞する。
 受賞を機に人気写真家としての道を歩み始める政志だったが、そんな矢先に勃発したのが「東日本大震災」だった。

 1年前に撮影したある家族の安否を確かめるために被災地へ出かけるが、悲惨な光景にカメラのシャッターを押すことができない。
 現地で、津波で泥まみれの写真を洗浄し、持ち主に返すボランティアをしている大学院生(菅田将暉)と出会い、彼を手伝うようになる。津波に流された写真を家族の元に戻し、涙を流して喜ぶ人々を目の当たりにし、改めて写真の持つ重要性を思い知る。
 そんな折、政志は被災から3カ月経っても父親が行方不明という少女から「家族写真を撮って欲しい」と懇願されるのだった――。

 ふだんは考えることのない家族、故郷、写真の大切さやありがたさに改めて気づかせてくれる作品。笑えて、心揺さぶられる渾身作だ。
 二宮はじめ妻夫木、平田、風吹の4人家族のほか、菅田、黒木華、渡辺真起子、池谷のぶえ、北村有起哉、後藤由依良、駿河太郎ら皆が素晴らしい演技を見せている。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 浅田家!
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(木曜12時)を担当。