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医学のうんちく/加齢精子

2020年9月25日
 喫煙、放射線などが精子DNAに損傷を与えることは知られていますが、中でも加齢による影響は大きく、出生児において自閉症、統合失調症、双極性障害などのリスクが増加します。

精子は加齢で損傷?

 ポーランドのポメラニアン大の研究チームは2019年、精子のDNA損傷を示すDNA断片化率が40歳未満で10.8%、40歳以上で18.5%と明らかに増加し、1年ごとに3%増加することを報告しています。
 アイスランドの研究チームも12年、同国に住む父母と子の3人1組、計78組の全ゲノム解析を行い、両親になく子だけに存在する新生突然変異を調査しました。
 父親の年齢が1歳上がるごとに子の新生突然変異の数が2個ずつ増加しましたが、母親由来の新生突然変異は年齢によらずほぼ一定でした。

医学のうんちく/加齢精子

突然変異も増加

 この結果に対し、米スタンフォード大の研究チームが19年、アイスランドの住民遺伝子解析データから再検討したところ、父親由来の突然変異は年齢にかかわらず高いことが分かりました。
 ただ放射線などのDNA損傷の修復ミスなどで起こる突然変異は父親の加齢とともに低下するものの、それ以外が原因の突然変異は加齢とともに上昇していました。

神経発達にも影響か

 東北大の研究チームは20年、マウスを用いた実験で、遺伝子の働きを制御する複数の物質が、精子形成過程において加齢に伴い大きく変化することを発見しました。これらはDNAの働きを修飾する物質であり、従来のDNA損傷とは異なる機序です。
 一部の物質は精子内の含有量とマウスの音声コミュニケーション異常との間に相関性があり、神経発達の予測マーカーと考えられています。

晩婚化に警鐘

 いずれの報告も、昨今の晩婚化に警鐘を鳴らしているようです。


医学のうんちく/加齢精子
医学のうんちく/Y染色体のお話(中)
山形徳洲会病院長
笹川 五十次
(ささがわ・いそじ)1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医、日本腎臓学会認定腎臓専門医。