徹底して山形に密着したフリーペーパー

《おしえて!編集長》 介護保険、どう変わったの?

2007年2月9日
 やまがたコミュニティ新聞のカッシーです。山形県は3世代同居世帯の比率が全国1位。山形市で生まれ育った私もご他聞にもれず、両親、祖母と暮らしています。84歳になる祖母は今は元気ですが、この先は心配。そこで介護保険制度について勉強しておこうと、何でも知ってて頼りになる編集長に聞いてみました。
《おしえて!編集長》 介護保険、どう変わったの?
「カイゴホケン」って、よく知らないんですけど…。

一割負担で利用急増


 「介護保険制度が始まったのは2000年4月。本人にとっても家族にとっても最大の不安である介護を社会全体で支えていこうとスタートしたんだ」
 「制度は40歳以上の人から保険料を徴収し、国や自治体の公費を加えて財源にしている。加入者は介護が必要と認定されれば、かかった費用の1割を負担するだけで各種の介護サービスを受けられる仕組みになってる」
 「制度が定着するにつれて、サービスを利用する人が増えた。だって本人負担は1割でいいんだもの、利用できるものは何でも使おうと考える人も出てくるよね。そんなこんなでサービス利用者はスタート時から倍増していて、保険財政が破綻してしまうと厚生労働省は危機感を強めている」
《おしえて!編集長》 介護保険、どう変わったの?
祖母が認知症になっても、お母さんや私が家で面倒見るもん。

特養は入所待機組も

 「はぁ、ずーと独身でいるわけね。でも昔と違って医療が高度化し、お年寄りが衰弱してから死を迎えるまでの期間が長期化しているよね。そのうち、お母さんだって年を重ねていくだろうし、カッシーだって、ひょっとしたら結婚して家を出ないとも限らないだろ」
 「山形は3世代同居率が高くて『介護力』が強い県とされていたけど、山形市中心部にマンションが続々と建設されているし、蔵王や嶋でニュータウンが造成され、核家族化が加速する見通しだ」
 「国勢調査によれば、山形の1世帯当たりの人数は2000年が3.25だったけど05年には3.09に減り、10年に3を切るのは確実だ。山形の『介護力』は間違いなく落ちていくと思うよ」
 「実際、年老いた子どもが親の面倒をみる『老老介護』が増え、去年9月には東根市で介護に疲れた無理心中とみられる痛ましい事件もおきた。一方で終身入居できる特別養護老人ホーム(特養)は入居希望者が殺到しており、県全体では約1万人、山形市では約1000人が待機しているとされる」
《おしえて!編集長》 介護保険、どう変わったの?
制度が変わったってお母さんから聞きました。

流れは施設から在宅

 「財政が破綻しそうになって厚労省があわてたんだよ。特養の場合だと、相部屋なら1カ月2万5000─5万6000円で入所できたんだから。去年の4月から実施されてる制度改正のポイントはいくつかあるけど、要約すれば費用がかかる特養などの『施設』から、低コストの『在宅』へと介護の場所をシフトしていこうということさ」
 「住み慣れた地域での介護を目指すのが『在宅』で、こうした地域密着型サービスの柱として期待されているのが小規模多機能型居宅介護だ。デイサービス(通い)、ショートステイ(宿泊)、訪問介護を1つの事業所で複合的に行うサービスなんだ。サービスは24時間態勢で、利用者は利用回数にかかわらず1カ月単位の金額が介護度によって決められている」
 「これまでのデイサービス、ショートステイ、訪問介護は事業所が異なったり、同じ事業所でもサービスによって担当者が変わることが多かった。だから、特に認知症の高齢者は『いつもの人と違う』と混乱することがあったけど、その心配もないよね」
《おしえて!編集長》 介護保険、どう変わったの?
なんか、いい感じのサービスみたいですけど、問題点はないんですか?

注目の小規模多機能

 「いい質問だね。小規模多機能型の登録定員は25人と文字通り小規模で、日帰り介護の定員も1日最大15人と平均的な日帰り施設の半分以下。しかも24時間態勢で職員を配置するわりには介護報酬が不十分という点も指摘されている」
 「だから採算的に不安だという理由で全国的にみても参入する業者が少ないんだ。新しいサービスということで一般に浸透していないこともネックになってる」 「全国で最も多いのが福岡県の43カ所で、山形県は7カ所。内訳は山形市が4カ所、あとは酒田市、鶴岡市、長井市に各1カ所。ちなみに仙台市を擁するにもかかわらず宮城県は4カ所にとどまってる。東北6県では、秋田の12カ所に次いで山形は2番目の多さだ」

《おしえて!編集長》 介護保険、どう変わったの?
利用者の反応はどうなんですか?

認知されるのがカギ

 「使っている人に聞くと、近所にあって担当者も決まっているので、雰囲気が家庭的でいいという反応が多い。ただ山形のお年寄りって、良く言えば慎重、悪く言えばガンコな人が多いから、新しいものになかなか飛びつかない。だから広く認知されるには時間がかかるかも知れないね」
 「でも国や地方自治体は大規模な特養の建設は凍結する方針を示しており、今後の介護サービスの一方の担い手になるのは間違いない。山形市でも当面は12─20施設の開設を目指している」

財政負担を抑えるため、地域や家庭が高齢者を支えていくことが求められているわけですね。20代の私も気をつけて、年をとってもせめて健康でいるよう心がけまーす。