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<荒井幸博のシネマつれづれ> ハリエット

2020年6月12日
自由を求めて闘う女性

 5月25日に米ミネアポリス市で黒人男性が白人警察に首を押さえつけられ死亡した事件で全米各地に抗議デモが拡大しているが、本作は奴隷制度がまかり通っていた19世紀、奴隷解放運動家として活躍した黒人女性ハリエット・タブマンの激動の人生を描いた伝記映画だ。

<荒井幸博のシネマつれづれ> ハリエット

 1840年代の米メリーランド州。ミンティはブローダス家が所有する農園の奴隷として幼いころから過酷な生活を強いられていた。そんな彼女の願いはただひとつ、いつか自由の身となって家族とともに人間らしい生活を送ることだった。
 ところがブローダス家が借金のかたに自分を売りに出そうとしていることを知り、ミンティは奴隷制が廃止されたペンシルベニア州を目指して脱走することを決意する。

 執拗な追っ手をかわしながら命からがらペンシルベニアにたどり着いたミンティはハリエット・タブマンと名乗り、奴隷の逃亡を助ける活動に身を投じるようになる。
 愛する家族を救出すべくメリーランド州に舞い戻り、奴隷制度廃止運動家たちの秘密組織「地下鉄道」の一員となったハリエットは、奴隷の逃亡を手助けする「車掌」として危険を顧みず800名もの奴隷を救出するのだった。
 そして奴隷制度の是非を争う南北戦争の勃発。ハリエットは黒人兵士を率い、北軍の一員として戦場に赴いていく――。

 メガホンを取ったのは黒人女性監督ケイシー・レモンズ。ハリエットを熱演したのはミュージカル女優シンシア・エリヴォ。主題歌「スタンド・アップ」や劇中歌も歌い、その演技と魂の歌声は観る者の胸を打ち、今年の第92回アカデミー賞で主演女優賞と主題歌曲賞にノミネートされた。

 ハリエット・タブマンはオバマ前大統領時代にアフリカ系アメリカ人として初めて20ドル紙幣に肖像が採用されることが決まったが、トランプ大統領が差し止め、いまだに発行されていないことを付記しておく。
 米国における人種差別の根はいまだに深い。


<荒井幸博のシネマつれづれ> ハリエット
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(木曜12時)を担当。