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<荒井幸博のシネマつれづれ> 島にて

2020年5月22日
飛島の人々の営みを描く

 日本海にぽっかりと浮かぶ県内唯一の有人離島、飛島(酒田市)。本作は新庄市出身の大宮浩一さん(61)と神奈川県川崎市出身の田中圭さん(33)の2人の映画監督が、平成最後の1年間の島民の暮らしを追ったドキュメンタリー映画である。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 島にて

 飛島は酒田港から定期船で75分、面積は2.75平方キロメートル。豊かな自然に恵まれ、島全域が国定公園に指定されているが、過疎化が進み現在の人口は140人足らず。平均年齢は70歳と島民のほとんどは高齢者。映画に登場する島民の大半は大宮さんらが島で偶然出会った人々だ。

 和島十四男さん(80)は45歳の時に漁師を辞め、東京の工場で働いていたが、還暦を前に夫婦でUターン、再び漁を生業にするようになった。
 「かつては北はシベリア・樺太がら南は九州まで港々に女がいで…。今はわびしいもんだ」と語る和島さんのかたわらでは、淡々と編み物をする奥さん(78)が「まだ、じいちゃんの自慢話がはじまた」と呆れ気味。苦難を乗り越えてきた夫婦の年月がうかがえる。

 夫に30年前に先立たれ、独り暮らしの佐藤みつさん(86)は、腰が曲がりながらも60年登り続けている急な階段を生活路として利用している。
 往時を懐かしみ、年々進む島の過疎化を嘆いているが、酒田市で暮らす息子夫婦が一緒に暮らそうと誘っても決して島を離れようとしない。やはり島の暮らしに愛着があるのだろう。 
 老人たちの表情は穏やかで柔和、そして微笑みを絶やさない。

 小中学生は中学3年の男子1人だけで、この少年を指導するのは校長はじめ複数の教師たち。卒業後は酒田市の高校に進学するため島を離れることが決まっており、少年の卒業には本人よりも大人たちの感慨深さが胸に迫ってくる。
     
 飛島に希望はないのかと思いきや、U・Iターンで移り住み、島おこしに取り組む若い世代もいる。新型コロナウイルスで閉塞感が漂うなか、島民の淡々とした営みや笑顔に励まされ、離島の暮らしにこそ未来のヒントがあるような気がした。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 島にて
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(木曜12時)を担当。