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真理子先生の女性のミカタ/子宮頸がんワクチン

2020年5月8日
 年間に約2900人が亡くなっている子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルス(HPV)の性行為感染が大半です。
 現在までのところ子宮頸がんの治療法は見つかっておらず、予防に有効とされるワクチンは存在しますが、このHPVワクチンは悩ましい問題も抱えています。

国は積極勧奨せず

 日本でHPVワクチンは2013年4月に接種費用が公費で賄われる「定期接種」になりましたが、接種後の体調不良を訴える人が出たということで国は同年6月、自治体に対し対象者への案内など積極勧奨を控えるよう勧告したのです。
 そのため中止前に70%程度あった接種率は今では1%未満とされます。

真理子先生の女性のミカタ/子宮頸がんワクチン

WHOは推奨

 ただ世界保健機関(WHO)が接種を推奨し、多くの国が導入しているのは事実。日本が積極勧奨していないことに対しWHOは「若い女性をHPVによるがんの危機にさらしている」と批判する声明を出しています。
 一方で厚生労働省はその後の調査で「HPVワクチン接種率が低い出生年度は子宮頸がん検査異常が多く、予防効果は明らか」と認めており、ワクチンと副作用についても「因果関係は判断できない」としています。

産婦人科の立場からは

 国の制度としてワクチンの「思春期の定期接種」は現在も続いています。また子宮頸がんで亡くなる患者さんを多数見ている産婦人科の立場からいえば、積極的な接種勧奨を再開してもらいたいというのが本音です。

動き始める自治体も

 ワクチンの存在すら知らない人が増えている中、「情報不足から接種機会を失わせていいのか」と、国の“方針”に反して接種対象者に積極勧奨する自治体も出始めています。


真理子先生の女性のミカタ/子宮頸がんワクチン
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院長
伊藤真理子
(いとう・まりこ) 1986年山形大学医学部卒業。山大病院、篠田病院を経て2005年6月に真理子レディースクリニックを開業。日本産婦人科学会認定産婦人科専門医。