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内科あれこれ/胃がん内視鏡検診

2020年4月24日
 山形市では4月から、経鼻内視鏡を使った胃がん検診」が始まりました。50歳以上でその年度に偶数歳になる方が対象です。

根強い内視鏡への抵抗感

 胃がんの原因の大半はピロリ菌で、ピロリ菌を駆除する「除菌」を行えば胃がんは減らすことができるとされます。
 その際には必ず内視鏡を使った胃がん検診を行い、慢性胃炎が存在し、かつその時点で胃がんがないことを確認することが必要でしたが、いきなり内視鏡検査を受けることに抵抗感を持つ人がいるのも事実でした。

内科あれこれ/胃がん内視鏡検診

「鼻から」が主流に

 こうした実情を背景に登場したのが、鼻から入れる経鼻内視鏡による胃がん検診だったわけです。経鼻内視鏡は従来の口から入れる内視鏡に比べ、「オエッ」となる咽頭反射がなく、患者さんの負担が軽減されるのが特徴。そのため、現在では「口から」を上回って「鼻から」が主流になっているほどです。

課題だった精度管理

 ただ、経鼻内視鏡には欠点もあり、その最大のものは精度管理でした。
 一般に胃がん、肺がん、乳がんなど目で見て行う診断を画像診断といいます。数値で見る検査なら「~以上なら陽性」と客観的な判定が可能ですが、画像診断では個人差が出てしまいます。
 そのため検診では複数の医師が判定に関与します。そのシステムを構築し、市に認めてもらう必要がありました。

現在は推奨できず

 もっとも、こうして試行錯誤の末に始まった経鼻内視鏡を使った市による胃がん検診でしたが、昨今の情勢を鑑みると積極的にはお勧めできません。非常事態宣言が解除された暁には今回のコラムを思い出して下さい。


内科あれこれ/胃がん内視鏡検診
きくち
きくち内科医院 院長
菊地 義文
(きくち・よしふみ)1985年(昭和60年)東北大学医学部卒業。同大医学部第三内科を経て96年に山形市立病院済生館へ。2013年4月に「きくち内科医院」開院。