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<荒井幸博のシネマつれづれ>ラストレター

2020年1月24日
手紙が導く美しき物語

 姉の未咲が亡くなり、葬儀の場で未咲の娘の鮎美(広瀬すず)と再会した裕里(松たか子)は、未咲に届いた同窓会の案内状と、未咲が鮎美に残した手紙の存在を知る。

<荒井幸博のシネマつれづれ>ラストレター

 未咲の死を伝えるため裕里は同窓会に足を運ぶが、学校の生徒会長でマドンナだった姉と勘違いされ、スピーチまでさせられる羽目に。そしてその場で裕里の初恋の上級生で、今は売れない小説家の乙坂鏡史郎(福山雅治)と再会する。
 鏡史郎は未咲への想いを抱き続けていた。中座した裕里の後を追い、鏡史郎が話しかけたことから2人の文通が始まる。裕里は未咲になりすまして手紙を書き続けていたが、鏡史郎の一通が鮎美に届いてしまい、鮎美もまた母(未咲)を装い鏡史郎に手紙を送る。
 そこから、鏡史郎(回想・神木隆之介)と母・未咲(回想・広瀬すず2役)、叔母・裕里(回想・森七菜)の学生時代の淡い初恋の思い出をたどり始める。未咲の死の真相とともに、封印してきたそれぞれの想いが時空を超えて動き出していくのだった――。

 メガホンをとったのは仙台市出身の岩井俊二監督で、世界中から喝采を浴びた1995年公開の初監督作品「Love Letter」から25年。この間、「スワロウテイル」「花とアリス」「リリィ・シュシュのすべて」など数々の名作を送り出してきたが、本作は故郷・宮城県を舞台に描いた集大成ともいうべき珠玉のラブストーリー。
 松や福山、広瀬といった豪華な顔ぶれに加え庵野秀明(映画監督)、ミュージシャンの小室等、水越けいこ、鈴木慶一らが顔をそろえる岩井監督ならではの配役。昨年11月に69歳で他界した木内みどりさん、「Love Letter」の主演コンビ・中山美穂と豊川悦司の出演も嬉しい。

 メールやラインといった情報伝達手段が当たり前になっている昨今、初監督作品から通底するレター(手紙)の温かさと大切さがあらためて伝わってくる。


<荒井幸博のシネマつれづれ>ラストレター
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(木曜12時)を担当。