徹底して山形に密着したフリーペーパー

<荒井幸博のシネマつれづれ>男はつらいよ お帰り 寅さん

2019年12月27日
22年ぶり、感動のシリーズ復活

 山田洋次監督、渥美清主演で国民的人気を博した「男はつらいよ」シリーズの第1作が公開されたのは1969年。
 主人公「寅さん」を演じる渥美さんが96年に68歳で亡くなり、以後シリーズの製作は途絶えていたが、第1作から50周年を迎える今年、22年ぶりに「男はつらいよ」が復活する!

<荒井幸博のシネマつれづれ>男はつらいよ お帰り 寅さん

 寅さんの甥の満男(吉岡秀隆)は6年前に妻を亡くし、中学生の娘ユリ(桜田ひより)とマンションで2人暮らし。妻の七回忌の法要で久々に訪れた葛飾の実家では両親や親戚、近所の人々と昔話に花を咲かすが、話題は寅さんのことばかり。
 そんなある日、満男はかつて愛した泉(後藤久美子)と思いがけず再会する。喜んだ満男は「会わせたい人がいる」と神保町のジャズ喫茶に泉を誘う。そこにいたのは寅さんのかつての恋人・リリー(浅丘ルリ子)。リリーの口から語られる寅さんの意外な過去――。

 本作を観る前は正直、「渥美さんが亡くなって幾星霜、何を今さら」という思いがあったが、結論から言えばそんな思いは見事にかき消された。
 シリーズの過去の名場面が回想の要所要所で登場し、寅さん、おいちゃん(森川信・松村達雄・下条正巳)、おばちゃん(三崎千恵子)、タコ社長(太宰久雄)、御前様(笠智衆)、若きさくら(倍賞千恵子)、博(前田吟)、源公(佐藤蛾次郎)、そしてリリーを始め美しきマドンナたちが活き活きと甦り、最後は吉岡演じる満男と同様、涙が頬を伝っていた。
 主題歌を歌うのは山田監督の懇願に応えた桑田佳佑。

 エンディングロールで「カメラマンの高羽哲夫さんをはじめシリーズをともに創った大勢の仲間たちにこの作品をおくる」と記される。
 渥美さんが亡くなる前年、69歳で逝った高羽さんは会津若松市の出身で山大工学部の前身・米沢高専卒。その縁で何度かお会いしていただけにまた涙、涙。
 88歳で本作を作り上げた山田監督に拍手を贈りたい。正月はやっぱり「寅さん」だよね。


<荒井幸博のシネマつれづれ>男はつらいよ お帰り 寅さん
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(木曜12時)を担当。