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<荒井幸博のシネマつれづれ>決算!忠臣蔵

2019年11月22日
経済面から描く「討ち入り」

 これまであらゆる角度から描き尽くされた感のある「忠臣蔵」を、経済的側面という新たな視点で描いた時代劇コメディ。

<荒井幸博のシネマつれづれ>決算!忠臣蔵

 主君の浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)が江戸城で吉良上野介(きら こうずけのすけ)に刃傷に及んだことで、筆頭家老の大石内蔵助(堤真一)ら赤穂浪士は路頭に迷うことになる。
 吉良に仇討ちするにも予算が必要。勘定方の矢頭長助(岡村隆史)の力を借りて財源の確保に努めるが、予算の都合で吉良邸への討ち入りのチャンスは1回きり。それも当初の予定より早めねばならない。予算内で仇討ちを成功させるべく奮闘する浪士たち――。

 原作は内蔵助が実際に記した「決算書」を基に、東京大学史科編纂所教授の山本博文教授が著した「『忠臣蔵』の決算書」。メガホンをとったのは「殿、利息でござる!」の中村義洋監督で脚本も中村監督の手によるもの。
 堤、岡村のほか、濱田岳、竹内結子、阿部サダヲ、石原さとみ、妻夫木聡ら豪華俳優が共演。

 そば1杯の値段が当時は16文(現在の480円)。映画では赤穂から江戸への旅費、宿泊費、武器代といった様々な経費が「そば指数」として具体的に示される。
 結果として800両(9500万円)を費やした原資はどこから出ていたのか、討ち入りの人数はなぜ47名だったのかが解き明かされる。
 そして経理面担当の「役方」といくさ担当の「番方」のいさかいは、現在の会社での経理部門と営業部門のそれにも重なるようで興味深い。
 登場人物のセリフが関西弁というのも従来の忠臣蔵にはなかったところだが、よくよく考えれば赤穂は関西。むしろその方が自然だし、得も言われぬおかしさが出る効果をもたらしている。

 敵役として描かれることの多い吉良上野介は米沢藩4代目藩主・上杉綱憲の実父で、本作でも「米沢」という地名が何度も登場する。その昔、米沢では「忠臣蔵」は上映されなかったというが、そんなことは無関係に楽しめる映画だ。


<荒井幸博のシネマつれづれ>決算!忠臣蔵
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(木曜12時)を担当。