税金のABC/(116)特別寄与制度
義父を介護した妻
この制度を説明するのに分かりやすい例が、夫の死後、義理の親を介護した妻のケースです。
これまでにも介護に報いるための「寄与制度」がありましたが、これは相続人が行った介護に限り、遺産分割の際に相続分に上乗せするものでした。ですが夫を亡くした妻は相続人でなく、介護の対価を要求することはできませんでした。それを可能にしたのが「特別寄与制度」です。

対価を相続人に請求
無償で被相続人を介護したことにより、被相続人の財産の維持や増加に貢献した親族が「特別寄与者」で、夫を亡くした妻が代表的な例です。相続開始前に離婚した場合は親族ではなくなるため、特別寄与者にはなれません。
特別寄与者は「特別寄与料」を相続人に請求できます。その額は、これまでにも相続人に認められていた寄与料に相当する額とされています。
応じなければ家裁へ
相続人がこれに応じない場合、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。ただし家裁への申し立てには期限があり、相続開始を知った時から6カ月以内、知らなくても死亡から1年以内に請求する必要があります。どちらか早い方で権利は消滅しますので、何も知らずに1年が経過すれば申し立てはできません。
相続税は?
注意が必要なのは被相続人の遺産に相続税がかかる場合、特別寄与者が寄与料を相続により取得したものとみなされることです。この場合は相続税の申告が必要になりますのでお忘れなく。
もめる要素にも
献身的に介護した親族の貢献が報われる反面、寄与料の算定は難しく、この制度は特別寄与者と相続人の間で“もめる”要素になる可能性もあります。
相続人以外の方への財産分与は、やはり遺言書が最も良い手段かもしれませんね。


(運営:税理士法人 あさひ会計)
税理士 菊地 克子