徹底して山形に密着したフリーペーパー

<荒井幸博のシネマつれづれ>山形国際ドキュメンタリー映画祭2019

2019年10月25日
映画祭で山形市に2万人!

 10月10日から始まり、17日に閉幕した「山形国際ドキュメンタリー映画祭」。30周年に当たる今年は8日間で176作品が上映され、1万9000人の入場者が訪れた。

<荒井幸博のシネマつれづれ>山形国際ドキュメンタリー映画祭2019

 インターナショナル・コンペティション部門の大賞には、王兵(ワンビン)監督(中国)の「死霊魂」が選ばれた。王兵監督は2003年、07年に続く3度目の戴冠で、市民が投票で選ぶ市民賞にも選ばれた。
 「死霊魂」は1950年代後半、中国共産党による粛清でゴビ砂漠にある収容所に送られ、大半が餓死する中で生き残った数少ない人々が語る8時間超の証言集。

 優秀賞のハサン・ファジリ監督(アフガニスタン)「ミッドナイト・トラベ ラー」は、タリバンから死刑宣告を受けたハサン監督夫妻が女児2人を連れて出国、ハンガリーに逃れるまでの3年間をスマートフォンで撮影した生々しい逃避行の記録。映画祭初期はフィルム作品のみの出品だったことを思うと隔世の感がある。
 もう1本の優秀賞「これは君の闘争だ」は、活発な政治運動を繰り広げるブラジルの高校生たちを追いかけた作品。「ドキュ山ユース」という高校生 ボランティアのメンバーがエリザ・カパイ監督にインタビューしていたが、彼らにとって素晴らしい体験だったろう。

 受賞は逃したが、クローディア・マルシ ャル監督(仏)の「約束の地で」は、14年前に故郷ボスニアを離れフランス東部で家族ととも暮らす妹と、ドイツで難民拒否の現実に直面して帰国を余儀なくされる姉の苦悩を描いている。排外主義の高まりの中で居場所を失っていく人々の将来や子どもたちの未来を考えずにはいられない作品。
 この「約束の地で」を市内の山形三中、高楯中、蔵王二中の生徒と教師約300人が団体観賞。上映後のQ&Aでは 生徒4人がマルシャル監督に差別や排外主義などに関し鋭い質問を投げかけていた。中学時代にこういう幸せな体験ができた彼らは幸せである。


<荒井幸博のシネマつれづれ>山形国際ドキュメンタリー映画祭2019
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(木曜12時)を担当。