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医学のうんちく/顕微授精

2019年10月11日
 精子の量や濃度、運動性、形態といった「精子の質」は不妊に大きく影響します。精子の質が著しく低下している場合の不妊治療に「顕微授精」という方法があります。

“良質”な精子を選別

 顕微授精は、精液や精巣組織から取り出した精子と卵巣から取り出した卵子を授精させるというもので、体外受精の発展型といえます。
 精子と卵子の自然な受精を待つ体外受精に対し、より精子の質が低下している場合に選択される顕微授精は運動性や形態に優れた1個の精子を選び出し、細い針を使って卵子の中に注入するという方法がとられます。

医学のうんちく/顕微授精

胚培養士の負担

 国内では年間約13万件の顕微授精が行われていますが、課題もあります。精子を選び出すのは「胚培養士(はいばいようし)」と呼ばれる医療技術者で、限られた時間内で良質な精子を見つけ出す高い能力が要求されます。
 彼らの負担は極めて大きく、経験の差などから治療成績に格差を認めることがありました。

AIで選別システム

 こうした課題を解決しようと、横浜市立大と横浜国立大の研究チームは今年、動画像処理と人工知能(AI)を使って良質な精子を見つけるシステムを開発しました。
 収録された精子採取動画から約17万個の細胞サンプルを抽出し、精子・非精子の学習を行ったところ、97~98%の精度を得ることに成功。さらに精子評価や選別スキルをAIに学習させた結果、精子のグレードを5段階で評価できるようになったというのです。

必要な今後の議論

 このシステムは今後の顕微授精に大きな影響を与えそうですが、研究チームによれば、現段階ではシステムはあくまで胚培養士の判断を補助するものとしています。
 AIが人間の生命にどこまで関わっていいかは今後の議論にゆだねられるべきでしょう。


医学のうんちく/顕微授精
医学のうんちく/Y染色体のお話(中)
山形徳洲会病院長
笹川 五十次
(ささがわ・いそじ)1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業、86年同大学大学院修了後、ハワイ州立大学医学部を経て、04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医、日本透析医学会認定透析専門医、日本腎臓学会認定腎臓専門医。