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内科あれこれ/脂質異常症の薬

2019年8月23日
 脂質異常症(2007年までの呼称は「高脂血症」)は、血液中の悪玉コレステロール(LDL)や中性脂肪の値が高い場合に生じる症状で、放置しておくと動脈硬化から狭心症や脳梗塞にもつながりかねません。今回は脂質異常症を治療する薬のお話です。

LDL減にはスタチン

 LDLを減らすのに最も使われるのは「スタチン」と呼ばれる薬です。LDLは食事から体内に取り入れるか、肝臓で作られるかのいずれかですが、スタチンには肝臓でLDLが作られる際に必要な酵素の働きを阻害する作用があります。このためスタチンはLDLの値を下げ、心筋梗塞の予防に非常に強い効果があることが多くの研究で明らかになっています。

内科あれこれ/脂質異常症の薬

中性脂肪減の薬は?

 その一方、中性脂肪を下げる薬はあまり使われていませんでした。なぜなら中性脂肪は食事制限や禁酒などで値を下げることが可能だからです。
 またコレステロールは値が下がると明らかに心筋梗塞が減るのに対し、中性脂肪には明確なデータがなかったことも一因です。
 
フィブラートには副作用

 中性脂肪を減らす薬が普及しなかったのには別な理由も。中性脂肪を下げる有効な薬として「フィブラート」と呼ばれる薬がありますが、スタチンと併用すると、体に力が入らないといった「横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう)」という副作用を生じてしまう問題があったからです。
 
画期的な新薬が

 その問題が1年半前に解決。新しいフィブラート「ペマフィブラート」が開発され、スタチンと併用しても副作用が少ないほか、フィブラートの1000倍以上もの効果があるとされます。
 今後、中性脂肪の治療は一新されるでしょう。


内科あれこれ/脂質異常症の薬
きくち
きくち内科医院 院長
菊地 義文
(きくち・よしふみ)1985年(昭和60年)東北大学医学部卒業。同大医学部第三内科を経て96年に山形市立病院済生館へ。2013年4月に「きくち内科医院」開院。