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<荒井幸博のシネマつれづれ>凪待ち

2019年7月12日
香取慎吾、圧巻の演技

 白石和彌監督が香取慎吾を主演に迎え石巻市や塩釜市などで撮影した映画「凪(なぎ)待ち」が公開されている。

<荒井幸博のシネマつれづれ>凪待ち

 首都圏で印刷工として働く郁男(香取)はギャンブル依存症で自堕落な毎日を送っていたが、恋人の亜弓(西田尚美)・とその娘・美波(恒松祐里)とともに彼女の故郷・石巻で再出発しようとする。
 亜弓の父親(吉澤健)は末期がんに侵されながらも漁師の仕事を続けていた。無骨ながらも郁夫の存在を認めてくれ、郁男、亜弓、美波の3人は少しずつ平穏な暮らしを取り戻しつつあるかのように見えた。
 そんなある日、亜弓と衝突した美波が家出してしまい、郁男と亜弓は車で捜索に向かうが、車中で口論になって郁男は亜弓を車から下ろしてしまう。その後、亜弓は遺体になって発見され――。

 公開に先立ち、6月13日に撮影のスタート地である塩釜水産物仲卸市場で完成報告試写会が行われた。上映前の白石監督の舞台挨拶を聞こう。
 「人間には誰しも落とし穴があり、罠が仕掛けられているが、同時に立ち上がり再起するチャンスも転がっている。そうした『喪失』と『再生』がこの映画のテーマで、観た後に優しい気持ちになり、心に傷を持つ人に凪が訪れれば」 
 舞台にはサプライズゲストで香取さんも登場し、会場は興奮のるつぼと化す。その香取さんの挨拶。
 「被災から8年。復興をずっと気にかけていました。撮影で炊き出しやエキストラでお世話になった方々に感謝です。皆さんに支えられて映画の中の役として生きることができました」 

 「彼女がその名を知らない鳥たち」「狐狼の血」「止められるか、俺たちを」「麻雀放浪記2020」と今、最も勢いのある白石監督とスケールの大きな香取さんの邂逅によってこの力作が生み出された。
 様々な忖度が働き、香取さん、草彅剛さん、稲垣吾郎さんの作品は地上波テレビでは扱われない傾向にあるようだが、「良いものは良い!」と断言したい。


<荒井幸博のシネマつれづれ>凪待ち
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜15時)を担当。