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<荒井幸博のシネマつれづれ>長いお別れ

2019年6月14日
消えない家族の思い出

 女優の蒼井優さんとお笑いコンビ「南海キャンディーズ」の山里亮太さんの結婚には度肝を抜かれましたが、2人揃っての結婚会見は近年ダントツに好感度の高いものでしたよね。その蒼井さんが主演する「長いお別れ」が現在公開中です。

<荒井幸博のシネマつれづれ>長いお別れ

 東昇平(山﨑努)は中学の校長を退職後は二人娘も巣立ち、長年連れ添った妻・曜子(松原智恵子)と夫婦水入らずでゆったりした日々を過ごしていた。
 長女・麻里(竹内結子)は夫の転勤で移り住んだアメリカでの慣れない暮らしに不安と戸惑いを感じていた。次女・芙美(蒼井)は仕事も恋愛も思うようにいかず思い悩んでいる。曜子はそんな2人を昇平の70歳の誕生パーティーに誘う。
 駆けつけた2人は、厳格で絶対的存在だった父が認知症を患っていたことを知らされる。そこから日に日に記憶を失い、壊れてゆく昇平と家族の7年が描かれる。やがて家族の誰もが忘れていた思い出が、昇平の中に息づいていることが分かり――。

 描かれる時代は2007年から2013年。そこには東日本大震災や東京オリンピック誘致決定など平成の大きな出来事が時系列に挿入される。 東家の家族を演じた山﨑、松原、竹内、蒼井が素晴らしい。メガホンをとった中野量太監督は前作「湯を沸かすほどの熱い愛」で日本アカデミー賞をはじめ数々の映画賞を総ナメにしたが、本作も親が子を想う気持ち、子が親を想う気持ちを見事に演出している。
 記憶は失っても心は残るというメッセージに共感し、涙する家族映画の傑作。親から子に受け継がれる葉っぱのしおり、だし巻き玉子、メリーゴーランド、3本の傘のエピソードは胸に迫る。

 芙美は雄吾(松澤匠)、続いて道彦(中村倫也)と愛し合い、同棲までするが、結婚には至らず別れてしまう。本作では恋愛が成就しなかった蒼井さんだったが、山里さんとの結婚というハッピーエンドが映画の先に待っていました。


<荒井幸博のシネマつれづれ>長いお別れ
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜15時)を担当。