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内科あれこれ/往診と訪問診療

2019年2月22日
 医療費抑制に向け国が推進しているのが在宅医療。在宅医療のうち医師が患者さんの自宅などに出向いて行う診療が「往診」「訪問診療」です。

在宅医療の一形態

 往診と訪問診療は異なります。往診は医師が患者さんやその家族の求めに応じて不定期に患者さんの自宅などを訪れて行う診療、一方、訪問診療は通院が困難な患者さんに対して医師が計画的に患者さんの自宅などを訪れて行う診療です。
 訪問診療は患者さんやご家族などの許可を得て計画的に行うもので、許可なく勝手に診療し、診療報酬を〝荒稼ぎ〟する医師の犯罪が時にニュースで取り上げられるのは残念なことです。

内科あれこれ/往診と訪問診療

往診の難しさ

 往診には悩ましいところもあります。診療時間内なら患者さんがいない合間を見て行うことになりますが、帰るまで何人かの患者さんをお待たせすることになります。
 時間外なら、まずその患者さんは入院などが必要な緊急性があるかどうかの判断に苦慮することになります。
 また緊急の場合、看護師などがいる施設であれば連絡をもらって救急車要請を指示することも可能ですが、ご家族にその判断を委ねるのは難しいでしょう。
 また、往診で抗生剤などを処方しようとしても「電子カルテが起こせない」「薬局が閉まっている」などの理由から、実際には十分な医療行為は困難なのです。

理想と現実の狭間で

 そうした理由から私どものような〝町医者〟が行っている在宅医療は大半が訪問診療というのが実情です。
 開業して間もなく6年。突発的な症状の変化に対応してご自宅に伺うという理想と、それに対応しきれない現実との狭間で思いは忸怩(じくじ)たるものがあります。


内科あれこれ/往診と訪問診療
きくち
きくち内科医院 院長
菊地 義文
プロフィール
(きくち・よしふみ)1985年(昭和60年)東北大学医学部卒業。同大医学部第三内科を経て96年に山形市立病院済生館へ。2013年4月に「きくち内科医院」開院。