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<荒井幸博のシネマつれづれ> 「映画づくり伝えたい」東北芸工大映像学科長に就く 根岸監督に聞く

2008年7月25日
 東北芸術工科大学に来年4月に新設される映像学科長に根岸吉太郎監督(57)が就任する。先日、その根岸監督にお会いしてお話をうかがった。
<荒井幸博のシネマつれづれ> 「映画づくり伝えたい」東北芸工大映像学科長に就く 根岸監督に聞く

中学から「将来は監督」

 根岸監督は東京で生まれ、映画館通いに没頭するうち中学時代には「映画監督になりたい」と思うようになったとか。
 早大卒業後、1974年に日活に入社。当時の日活は裕次郎、旭、ルリ子らが闊歩し栄華を誇った面影は、ない。テレビの普及に伴う映画産業の斜陽化、事業多角化の失敗などで経営が悪化、成人指定のいわゆる「ロマン・ポルノ路線」を歩んで4年目だった。

日活で初メガホン

 スターやベテラン監督は会社を離れ、はた目にはジリ貧に見えたが、一方で若い息吹が伸びやかに映画づくりに取り組んでいた。27歳で「オリオンの殺意より情事の方程式」で監督デビュー。
 その後、30歳で手がけた「遠雷」は映画賞を数多く受賞し、83年には「探偵物語」を大ヒットさせて一躍脚光を浴びる。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 「映画づくり伝えたい」東北芸工大映像学科長に就く 根岸監督に聞く

「遠雷」「探偵」で脚光

 同時に、長谷川和彦、相米慎二(故人)、高橋伴明、井筒和幸、大森一樹、池田敏春といった若い世代の監督たちと製作集団「ディレクターズ・カンパニー」を結成し、次々に作品を世に送り出していった。ここで根岸監督は監督だけでなく、山形市出身の池田敏春監督「人魚伝説」ではプロデュースも経験している。

俳優の新境地を引き出す

 監督としては「ウホッホ探検隊」で主人公を演じた田中邦衛にブルーリボン主演男優賞をもたらし、自身も報知映画賞監督賞を受賞した。この作品で田中が演じたのは、妻子がありながら不倫するインテリ男という役。従来のイメージとは真逆の役で、まさに田中にとっては新境地だった。
 自分の演出によって俳優の新しい面を引き出し、その俳優が評価されることが嬉しいという。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 「映画づくり伝えたい」東北芸工大映像学科長に就く 根岸監督に聞く

印象的な「教師の表情」

 「遠雷」は永島敏行に俳優としての道筋を与えたが、「透光の樹」では23年ぶりに永島を主演に起用、「脚本の行間を読み込んで芝居ができるいい俳優になった」と教え子の成長に目を細める〝教師〟の顔をみせた。
 この作品では、鮭川村の大杉(通称トトロの木)が登場し、重要な役割を担っている。池田敏春監督との関わりもあり、根岸監督が山形で教鞭を執るようになるのは必然だったのかもしれない。

伝わってくる熱い情熱

 「劇映画だけを教えるつもりはない」と根岸監督は言う。ドキュメンタリー、CM、アニメーション、写真、脚本、照明——。映画づくりにまつわる様々なことを山形の若者に伝えたいと、クールなイメージとは裏腹に熱く語ってくれた。
 また、現在「山形スクリーム」を撮影中の竹中直人監督や、鶴岡市出身の冨樫森監督は旧知の仲とか。「そんな連中を山形に集めて街の映画館で上映して、映画の話で盛り上がるのもいいよね」と山形人にとっては感涙もののアイデアも披露してくれた。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 「映画づくり伝えたい」東北芸工大映像学科長に就く 根岸監督に聞く

芸工大生が羨ましい!!

 映画祭が各地で催され、スクリーン数も充実してきた山形。「庄内映画村」「山形フィルム・コミッション」なども相次ぎ設立され、映画で盛り上がろうという機運が高まってきた今、必要なのは「人材」だということは以前に触れた。
 それだけに芸工大映像学科へ期待は膨らむ一方だし、ここで映画を学べる若者たちが実に羨ましい。