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<荒井幸博のシネマつれづれ>ボヘミアン・ラプソディ

2018年12月14日
世代を超えて驚異的ヒット

 70~80年代にかけ一世を風靡した英国のロックバンド、クイーンのボーカルで91年にエイズのため45歳で亡くなったフレディ・マーキュリーを描いた感動作。11月9日の公開から1カ月が過ぎても凄まじい観客動員を続けている。まさに〝社会現象〟といえるだろう。

<荒井幸博のシネマつれづれ>ボヘミアン・ラプソディ

 映画はインド系移民というフレディの出自から始まり、ブライアン・メイ、ロジャー・テイラー、ジョン・ディーコンを加えてクイーンとして活動するようになった経緯が描かれる。
 本作のタイトルにもなったのが英ロック史上最高の名曲とされる「ボヘミアン・ラプソディ」。6分という異例の長さからレコード会社から大反対されながらも初志を貫くクイーン。そのレコーディングでのフレディによる妥協のない姿勢とそれに応えるメンバーの様子に胸が打たれる。
 また足拍子、手拍子で始まる「ウィ・ウィル・ロック・ユー」の成り立ちなど、まさに舞台裏をのぞいているような気持になって思わず前のめりになってしまう。
 終生固い絆で結ばれたフレディとメアリーとの関係、同性愛の目覚め、そして薬物、アルコール依存、裏切り、メンバーとの軋轢(あつれき)……。

 決してきれいごとばかりではない稀代のエンターティナー、フレディの生きざまに心揺さぶられる。
 圧巻は死期を悟ったフレディがメンバーとの絆を取り戻し、85年7月13日に行った20世紀最大のチャリティコンサート「ライヴ・エイド」の20分にわたるステージ。
 その歌唱力、演奏、パフォーマンスはフレディを演じたラミ・マレックはじめメンバーを演じた俳優に本物が降臨したかのよう。思わず熱いものがこみ上げてくる。

 フレディ没後27年。「伝説のチャンピオン」「キラー・クイーン」「ラジオ・ガガ」「バイシクル・レース」など、本作では誰もが知る数多くのヒット曲が楽しめるのも嬉しい。観客動員の勢いは年を越しても止まないだろう。


<荒井幸博のシネマつれづれ>ボヘミアン・ラプソディ
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜15時)を担当。