内科あれこれ/がんの見落とし
2018年9月28日
検査でがんが見つかったのに、適切な治療が行われず患者が死亡してしまった――といった事件が相次いでいます。どうしてこんなことが起きるのでしょうか。
CTで「がんの疑い」
多くは放射線科医がコンピューター断層撮影装置(CT)の診断で「がんの疑いあり」という所見を出しながら、それを臨床医が見落とすというケースです。
かつては臨床医がCTの画像から読影(所見を診断すること)を行っていましたが、専門分野以外での見落とし事故が多発したため、現在では専門の放射線科医がすべてのCT画像の読影レポートを臨床医に伝えるという〝分業〟が主流になっています。この分業が「見落とし」の元凶という指摘があります。

臨床医に届かず
どういうことかと言いますと、臨床医もCT画像を読影しますが、やはり専門分野に目が行きがちになります。
その弊害をなくそうと分業を導入したわけですが、放射線科医からレポートが届くのは後日になります。それが待てず、臨床医が自分の読影で患者に説明し、次のステップに進んでしまうことが多々あります。
しかも後日届いたレポートに十分目を通さないということも残念ながら考えられます。
情報が伝わるシステムを
見落としを防ぐには、臨床医は専門分野だけに関心を持つだけでなく、患者の全身を診て治療に当たるという意識を持つことが大切でしょう。
臨床医や放射線科医の人手不足も一因しているのでしょうが、このことは言い訳にはなりません。限られた条件の中で両者がコミュニケーションを密にとり、確実に情報が伝わるシステムを構築することが大事だと感じます。
以上、自戒の念を込めまして。


きくち内科医院 院長
菊地 義文
プロフィール
● (きくち・よしふみ)1985年(昭和60年)東北大学医学部卒業。同大医学部第三内科を経て96年に山形市立病院済生館へ。2013年4月に「きくち内科医院」開院。
菊地 義文
プロフィール
● (きくち・よしふみ)1985年(昭和60年)東北大学医学部卒業。同大医学部第三内科を経て96年に山形市立病院済生館へ。2013年4月に「きくち内科医院」開院。