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<荒井幸博のシネマつれづれ> 少女

2016年10月14日
17歳の素顔とは

 人気作家・湊かなえの同名小説を「しあわせのパン」「繕い裁つ人」の三島有紀子監督が映画化したミステリー作品。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 少女

 高校2年生の由紀(本田翼)と親友の敦子(山本美月)は、転校生の紫織が「親友の死体を目撃したことがある」と自慢気に話すのを聞き、自分たちも「人が死ぬ瞬間を目撃したい」との思いに駆られるようになる。
 そこで夏休みに敦子は老人ホーム、由紀は小児科病棟でボランティアとして働き、「その瞬間」に立ち会おうとする。敦子はヘルパーをしている中年男・高雄と出会い、由紀は小児科病棟で昴とタッチーという闘病中の少年に出会う。それぞれの出会いによって物語は幾重にも交錯しながら急展開していく――。

 過去の作品では、地に足をつけて前向きに生きるヒューマンドラマを得意としてきた三島有紀子監督。読んだ後に嫌な気持ちになるミステリー「イヤミスの女王」と呼ばれる湊とのコンビはミスマッチではと思われたが、全くの杞憂。湊作品らしい〝因果応報〟〝不幸の連鎖〟といったダークな部分を巧みに描き出している。
 「17歳はキラキラしているように見えるが、閉塞感や生きづらさも感じてるはずで、そのあたりを描きたいと思っていた時に原作に出会った」「山本さんと本田さんは輝いている外見とは裏腹に一筋縄ではいかない印象があり、2人がぶつかり合いながらどんな化学反応が生まれるのかが楽しみだった」と三島監督。その狙いは見事に当たり、湊さんも絶賛してくれたとか。
 主演の2人のほか、アンジャッシュ児島一哉、稲垣吾郎らも好演、三島監督のキャスティングはズバリ当たっている。

 大学生の就活を描いた10月15日公開の「何者」でも重要な要素になっているSNS裏サイトや若者が抱える建前と本音について考えさせられる映画だが、冷静に考えれば、大人社会の自分たちも持ち合わせているものだと感じた。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 少女
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。