徹底して山形に密着したフリーペーパー

《おしえて!編集長》 和牛高騰!!

2016年7月22日
 「米沢牛」「山形牛」で知られるように、山形が国内有数の和牛産地ということはご存知ですよね。これからの季節は焼肉やステーキなどスタミナ源としても珍重される和牛。でもここ数年は取り巻く環境が全国的に激変していて、生産者は窮地に立たされているんですって。何が起きてるの?教えて編集長!
《おしえて!編集長》 和牛高騰!!

環境の激変って、環太平洋経済連携協定(TPP)の影響ですか?

TPPは追い風?

 「そうじゃない。そもそもTPPは「お互いの関税をゼロにして自由に貿易しましょ」というのが基本。だから一般の農産物は安い外国産の影響を受けるけど、ブランド品の和牛は逆に輸出しやすくなる。生産者にとってTPPはむしろ追い風になるわけだ」

じゃあ、環境の激変って?

繁殖と肥育の分業

 「その話の前段として、和牛がどうやって生産されるかの説明をしておこうね。和牛の生産は〝分業〟で成り立っていて、子牛を育てる『繁殖農家』と、繁殖農家から子牛を買って成牛に育てる『肥育農家』に分かれるんだ」
 「和牛のブランドって『山形牛』『米沢牛』をはじめ、『神戸牛』『松阪牛』『近江牛』など幾つかあるけど、極端に言えば子牛は同じ。独自の育て方、肥育のやり方でそれぞれのブランド牛になるわけだ」

ふ~ん

《おしえて!編集長》 和牛高騰!!

子牛価格、バブルの様相

 「ここからが本題。その子牛価格が急騰していて、最新6月の全国平均価格は1頭80万円と過去最高値圏。この1年だけでも23%上昇し、直近の安値だった7年前に比べれば2倍以上にハネ上がっている。子牛価格は今や『バブル』の様相を呈している」

エー、エー、エー

子牛が足りない!

 「その原因は繁殖農家の減少。10年前に約6万4000戸だった繁殖農家は今では約4万7000戸。肥育農家は高齢化が顕著なんだけど、2010年に宮崎県で発生した口蹄疫や翌11年の東日本大震災などをきっかけに廃業に踏み切る繁殖農家が後を絶たない」
 「繁殖農家が減るってことは子牛の絶対数の不足につながる。少ない子牛を肥育農家が取り合うから、必然的に価格は上がっちゃうよね」

そうですよね。

《おしえて!編集長》 和牛高騰!!

店頭価格も上昇

 「肥育農家にとっては仕入れ価格が上がるわけだから、成牛価格に転嫁せざるを得ない。一方で子牛が減るってことは成牛も減るわけで、成牛も取り合いになるよね」
 「それやこれやで、成牛価格もウナギ登り。現在の枝肉価格は最高級とされるA5ランクで1キロ2800円前後と、過去20年を振り返っても最高値で推移している」
 「価格が上がってるのは我々も実感できるよね。スーパーに行けば和牛の売り場は狭くなってるし、焼き肉やステーキ店では和牛を使ったメニューの料金を引き上げる動きも広がってる」
 「スーパーや外食店は消費に響くから値上げは避けたいところなんだろうけど、企業努力では吸収できないほど仕入れ価格が上がってるんだよ」

この先はどうなるんでしょう?

産地は正念場

 「そこが問題。これまでは子牛価格にスライドして成牛価格も上がってきたけど、さすがにこれ以上値上がりすると売れ行きに響くだろう」
 「一般に肥育農家は子牛を買って約20カ月育てて成牛として出荷する。子牛価格は依然として値上がり傾向にあるから、成牛価格が頭打ちになると肥育農家の経営は苦しくなってくるよね」
 「山形では米沢牛や山形牛のほかにも『霜降り和牛』『最上牛』『天童牛』などブランド化に取り組んでいるけど、今後は逆風も予想される。正念場だよね」

ガンバレ、山形和牛!