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<荒井幸博のシネマつれづれ> ぼくたちと駐在さんの700日戦争

2008年6月27日
 前号で触れた映画「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」(以下ぼくちゅう)は、田舎町のヤンチャな高校生グループと駐在さんの悪戯合戦をベースにした痛快青春コメディだ。
<荒井幸博のシネマつれづれ> ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「今」を追うブログ小説

拡がる凱旋上映

 6月20日で劇場公開は終了したが、7月12日には新庄市と酒田市でホール上映されたほか、川西町でも8月3日に上映されることが決まり、各地に拡がろうとしている。

原作者、白鷹町出身

 原作者のママチャリさんは白鷹町出身。2006年7月からFC2ブログ内小説として公開を始め、その面白さがまたたく間に口コミで拡がっていった。ブログランキング小説部門1位、お笑い部門1位に輝く。
 07年4月に高陵社書店から出版され、同年8月には英語版も。米国の「ワールド・トップ・ブログ」でユーモア部門1位を獲得するなど、映画化への材料はそろい過ぎるぐらいそろっていた。

読者から様々な反響

 先日、ママチャリさんとお会いして話をうかがう機会があった。私は失礼ながら原作は読まずに、映画に大満足をしてお会いしたので、〈ブログ小説→書籍化→映画化〉で完結していると思い込んでいました。それは大きな間違いでした。
 ブログ小説に読者からの感想やメッセージが多数寄せられる中で、死ぬことばかり考えていたリストカッターの若者から「久しぶりに笑った」「明日も連載が続くなら、まだ生きて読もうと思う」といったコメントが届くようになり、5章が終わった段階で書くことが止められなくなる。

<荒井幸博のシネマつれづれ> ぼくたちと駐在さんの700日戦争

自殺、不登校、いじめ…。

 6章では不登校児から「ぼくちゅうを読んでいると学校に行った気になる」というメッセージが届く。それに対してママチャリさんは「君が学校に行くまで毎日書く」と返事して「いじめ問題」を内容に盛り込む。その不登校児は7章に入った時、学校に登校するようになった。

読者との双方向

 当初はママチャリさんが白鷹町で過ごした30数年前の高校時代の体験がベースだったが、読者とキャッチボールする中で登場人物を動かすようになり、テーマも「いじめ」「動物愛護」「お金」「家庭内暴力」「恋愛」と多岐に及ぶようになっていった。

白血病患者も救おう!

 極めつきが10章。もともとぼくちゅうファンだった北海道の中学1年の少年の母親から「息子が白血病で倒れました」との知らせが届く。ママチャリさんは「お子さんのためにだけ書きましょう」と返事をする。その少年を物語に実名で登場させ、活躍させて励まし続ける。全国の読者からも千羽鶴、万羽鶴が届いたという。
 少年は長く辛い抗ガン剤治療をぼくちゅうを読みながら笑って受けることができたという。そのことは彼の影響でぼくちゅうファンになった主治医が知らせてくれた。そして半年ほどで少年の白血病は治癒し、現在は中学2年生でラグビー部で活躍しているという。

<荒井幸博のシネマつれづれ> ぼくたちと駐在さんの700日戦争

ぼくちゅう悪戯の定義

 「私にとって、ぼくちゅうは命をかけてもいいと思えるライフワーク。だから読んで欲しいですね。映画はブログ小説のPRに過ぎない」と言うママチャリさんの表情は晴れやかだ。
 「ぼくちゅう悪戯の定義」というのがある。それは①相手に怪我を負わせてはならない②仕掛けられた相手も笑えなければならない③相手が弱者であってはならない④償いができないものは悪戯ではないーーというもの。このぼくちゅうが持つ世界観は、現代社会がなくしつつある大切なものではないだろうか。

続編に期待

 ぼくちゅうファンの間では、続篇制作の熱い声が早くも盛り上がっている。続篇が作られる運びになったら、その時は脚本をママチャリさんに書いてもらい、白鷹町で撮影してもらいたい。ぜひ実現させてください。