徹底して山形に密着したフリーペーパー

今さら聞けない「老後」

2008年6月27日
 3世代同居世帯の比率が全国1位という山形県。それでも区画整理やニュータウンの造成、市中心部でのマンション建設などで核家族化も進行しています。一方で高齢化比率は高まってきており、1人暮らしのお年寄りの数も増える一方。老後の生活プランづくり、今さら聞けない疑問にお答えしましょう——。
今さら聞けない「老後」

●山形の人口高齢化の実態って?

 これは全国的な傾向でもありますが、総人口が減り続ける中で65歳以上の高齢者人口は一貫して増え続けています。その数は去年10月1日時点で31万6608人で、前年を3501人上回りました。
 この高齢者人口を総人口で割った「高齢化率」は26・4%で全国5番目という高さ。ちなみに全国平均は21・5%、1番高いのは島根県の28・2%、47都道府県で最も低いのは沖縄県の16・9%です。

●高齢者の人たちはどんな暮らしをしてるの?

 2005年の調査では山形県の3世代同居率は24・9%と全国1位。つまりお子さんやお孫さんと暮らしている比率が最も高い県ということになります。最低は東京都で率はな、な、なんと3・1%! これじゃあ橋ができても「渡り初め」の儀式なんてできませんね。
 そんな県内でも1人暮らしの高齢者は確実に増えており、去年4月1日時点では前年比1203人増の2万4557人となっています。1人暮らし高齢者の全高齢者に占める比率も7・8%と前年を0・3ポイント上回りました。
 市町村別では小国町が10・7%で最も高く、最も低かったのは鮭川村の3・4%。山形市は8・5%と7番目に高くなっています。

●介護保険制度って?

 1人暮らしを含めた高齢者の人口が増え続けるのに対応し、本人にとっても家族にとっても最大の不安である「介護」を社会全体で支えていこうという狙いから2000年4月にスタートした制度です。
 制度は40歳以上の人から保険料を徴収し、国や自治体の公費を加えて財源にしています。加入者は介護が必要と認定されれば、かかった費用の1割を負担するだけで各種の介護サービスが受けられる仕組みになっています。

今さら聞けない「老後」

●制度、変わったんでしょ。

 2006年4月に改正されました。その背景は、介護保険制度が定着するにつれ、1割だけという本人負担の割安感からサービスを利用する人が増えたことです。「このままでは保険財政が破綻してしまう」と厚生労働省が危機感を強めたわけです。
 特に終身入居できる特別養護老人ホーム(特養)は全国で入居希望者が殺到しており、山形県でも1万人、山形市では1000人が待機している状態です。

●改正の柱って?

 ポイントはいくつかありますが、要は費用がかかる特養などの「施設」から、低コストの「在宅」へと介護の現場をシフトしていこうというのが狙いです。住み慣れた地域での介護を目指すのが「在宅」です。
 こうした地域密着サービスの柱として期待されているのが小規模多機能型居宅介護。デイサービス(通い)、ショートステイ(宿泊)、訪問介護を1つの事業所で行うサービスで、24時間利用でき、利用回数にかかわらず1カ月単位の金額が介護度によって決められているのが特徴です。

今さら聞けない「老後」

●そんな施設、県内には何カ所あるの?

 現時点では34施設で、このうち11施設までが山形市にあります。山形市では来年3月末までの「第3期介護保険事業計画」の中で20施設の開設を目指しています。
 ただ小規模多機能型の登録店員は25人と文字通り小規模で、日帰り介護の定員も1日最大15人と平均的な日帰り施設の半分以下。また24時間態勢で職員を配置するわりには介護報酬が不十分という指摘もあります。

●ほかにはどんな施設があるの?

 借り手を高齢者に限定した賃貸住宅「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」が全国的に注目を集めています。高齢者に配慮した造りになっていなかったり、高齢者の入居を拒否する貸主もいて高齢者の住宅探しが困難だったことに対応、2005年に創設されたのが高専賃です。
 大半の高専賃が緊急時の対応や食事の提供などを行っていますが、高齢者を賃借人とする賃貸住宅であれば、介護の有無に関係なく都道府県に設備などの情報を登録できます。
 居室の広さが25平方メートル以上など一定の条件を満たす高専賃は「適合高専賃」と呼ばれ、自治体から介護報酬が支払われるケースもあります。
 気に入らなければすぐに出て行ける賃貸住宅としての気軽さが人気を呼んでいる模様で、全国に約2万戸とこの1年で倍増しています。

●いろんな施設が登場する中で、選び方のポイントってあるのかしら?

 その人の健康具合や手持ち資金にもよりますが、年をとって判断力が衰えてから選ぶのは避けた方がいいようです。「終(つい)の住みか選びは50歳代から」という人もいます。
 体験入居が可能ならぜひ利用してみましょう。また施設にはオーナーの人柄や考え方が自然と反映されるもので、オーナーとじっくり話す機会を持つことをお勧めします。