徹底して山形に密着したフリーペーパー

<荒井幸博のシネマつれづれ> いしゃ先生

2015年10月23日
まさに「オール山形」作品

 明治43年に西川町大井沢の名家に生まれ、24歳からがんで亡くなる51歳までをふるさとの医療に捧げた医師・志田周子(ちかこ)さんの半生を描いた作品。

<荒井幸博のシネマつれづれ> いしゃ先生

 東京で医療を学び病院に勤務したての周子(平山あや)は、無医村の大井沢で村長を務める父(榎木孝明)から3年間限定で戻ってきて欲しいと懇願される。
 東京に恋人を残し、不安を抱えながらも帰郷するが、そこに待っていたのは幼い3人の弟たちの世話、不備だらけの医療施設、なかなか受け入れてくれない村人たち…。
 雪深い中、重病患者をソリに乗せ、村の男衆の協力を得て手術設備が整った隣町に搬送しようとするが、途中で患者の命が尽きてしまい、己の無力さを痛感することも。
 そんな辛苦や試行錯誤を繰り返す中、周子は3年が過ぎても地域医療に献身しようと自らの意思で決意、恋人との結婚も断念し、命の続く限り1人で村人の命を守ろうとするのだった――。

 周子の偉業を後世に伝えたいという西川町の人たちの熱い想いに尾花沢出身の脚本家・あべ美佳さんが共鳴し、「志田周子の生涯を銀幕に甦らせる会」が発足したのが2013年2月。 
 脚本はあべさんが担当、監督は永江二朗氏で、昨年10月に撮影がスタート。完成は7月で、見事に志田周子が銀幕によみがえった。

 出演は平山、榎木、長谷川初範らのベテランに加え、斎藤絵美(酒田)、佐久間利彦(鶴岡)、古川孝(南陽)など県在住の俳優、さらに酒田出身の白崎映美、山形出身のトモ(テツ&トモ)ら県ゆかりの面々がズラリ。
 ロケ地も西川町大井沢の他、大江町、鶴岡市、尾花沢市、白鷹町、長井市、山形市など県内ほぼ全域にわたり、昭和時代の昔懐かしい山形の面影を伝えている。
 まさにオール山形の作品といえる。11月7日から県内7館で全国に先駆け公開。地元で勢いをつけ、来年1月から始まる東京上映、そして全国につなげたい。


<荒井幸博のシネマつれづれ> いしゃ先生
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。