女性の美と健康/自律神経失調症(2)
日本だけの概念
繰り返しになりますが、国際統計分類や米国精神医学会などにおいて「自律神経失調症」という疾病概念はなく、日本においてのみ病気として独り歩きしているのが現状です。
日本では「頭が重い」「イライラする」「汗が出る」などといった不定愁訴を訴える患者さんに対し、やや十把一絡(じっぱひとから)げ(失礼)的にこの病名を告げる医師の方が少なくないようです。病名が分かれば患者さんが安心する面もありますものね。

症状は認められます
では「自律神経の失調は存在しないの?」と聞かれれば、「それは存在します」とお答えするしかありません。
前回もご説明したように、自律神経とは自分の意思とは関係なく働く神経で、呼吸や代謝、消化や循環などの作用をつかさどります。
自律神経には体が活動している時や昼間に活発になる交感神経と、休んでいる時や夜間に活発になる副交感神経があり、これら2つの神経のバランスが崩れて様々な不定愁訴が生じることは医学会では誰しもが認めるところです。
探っていくと病気が
病気は存在しないのに症状は存在する――何やら禅問答のようですが、要は自律神経が失調をきたすのにはそれなりの原因があり、その原因(病気)を突き止めないと的確な治療は行えないということです。
原因としてはうつ病、パニック障害、過敏性腸症候群などのほか、場合によっては高血圧や心筋梗塞、さらにはがんの可能性すらあります。
SOSのシグナル
自律神経の失調はいわば、体が発しているSOSのシグナルなのです。


セントラルクリニック院長
村山 一彦
プロフィール
●(むらやま・かずひこ)1956年山形市生まれ。埼玉医科大学を卒業後、同大、篠田総合病院を経て2004年に産婦人科を中心とするセントラルクリニックを開院。社会福祉法人・慈風会の理事長として特別養護老人ホーム「なごみの里」、認可保育所「はらっぱ保育園」も手がける。