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<荒井幸博のシネマつれづれ> きみはいい子

2015年8月14日
想いが響き合う物語

 幼児虐待や学級崩壊、独居老人や認知症といった現代のネガティブな問題を通じて愛を描いた中脇初枝の同名小説をもとに、「そこのみにて光輝く」などの呉美保監督が映画化したヒューマンドラマ。

<荒井幸博のシネマつれづれ> きみはいい子

 小学校の新米教師・岡野匡(高良健吾)は真面目で爽やかな好青年だが、優柔不断で問題に真っ正面から向き合えない性格で、生徒からは軽んじられる。生徒の中には虐待や育児放棄されていると思われる子どももいるが、どう手を差し伸べていいのか分からず悩むばかりだった。

 水木雅美(尾野真千子)は夫が海外に単身赴任中で、3歳の娘・あやねと2人暮らし。幼いころ親に暴力を振るわれたことがトラウマになっているのか、公園でママ友に見せる笑顔の裏で、自宅ではヒステリックにあやねを折檻してしまう。
 手を上げられることに怯えながらも母親のことが大好きで、おそろいのエナメルの黒い靴を履いて手をつなぎ、無邪気にスキップするあやねのなんといじらしいことか。

 小学校へと続く坂道の一軒家に独りで暮らす老人・佐々木あきこ(喜多道枝)が心を通わせるのは、登下校中に挨拶をしてくれる自閉症の小学生だけだった。
 ある日、買い物に行ったスーパーで代金を払わずに店を出たことを店員の和美(富田靖子)にとがめられ、あきこは認知症の恐怖に怯えるようになる。和美は自閉症の息子を抱え、将来に不安を感じながらもレジの仕事をしながら懸命に生きてきたのだった。
 ひとつの町でそれぞれに暮らす登場人物たちはは、交錯しながらもやがて新たな一歩を踏み出していく――。

 人は誰しも褒められたら嬉しい、辛い時に分かってくれる人がいて欲しい――そんな当然のことを考えさせられ、思わず深くうなずいたり、「頑張れ!」と心の中で叫びたくなる映画。そして、教師・岡野の今後に大いに期待したい。


<荒井幸博のシネマつれづれ> きみはいい子
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。