徹底して山形に密着したフリーペーパー

<荒井幸博のシネマつれづれ> 海街diary

2015年6月12日
4姉妹の心の葛藤描く

 鎌倉の古く大きな家で暮す3姉妹、しっかり者の長女・幸(綾瀬はるか)、奔放な次女・佳乃(長澤まさみ)、マイペースな3女・千佳(夏帆)のもとに父の訃報が届く。父は15年前、不倫相手と駆け落ち、母と3人の子どもを捨てて家を出ていったのだった。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 海街diary

 3姉妹は、父の葬儀で訪れた山形県の温泉町で腹違いの妹、中学生のすず(広瀬すず)と出会う。不倫相手だったすずの母はすでに亡くなり、父は3度目の結婚をしていた。すずは頼りない義母と義弟を支え、気丈に振舞っていた。
 そんなすずがいじらしく、鎌倉へ帰る電車に乗る別れ際に幸が思わず「すずちゃん、鎌倉に来ない?一緒に暮らさない?4人で」と声をかける。そして鎌倉での4姉妹での生活が始まるのだった。 
 すずは姉たちの愛情、地域の人たちのやさしさに包まれ笑顔を取り戻すが、幸せを享受すればするほど、自分の母親が姉たちから父親を奪い、そして自分が生まれたのだと自責の念に駆られるのだった。

 4姉妹を演じた女優のアンサンブルが素晴らしい。「世界の中心で愛を叫ぶ」のTV版、映画版でそれぞれブレイクした綾瀬と長澤の共演はNGと思われたが、この2人のボケと突っ込みのようなやり取りが秀逸。4女のすずの愛らしさ、健気(けなげ)さは広瀬ならではのもの。つなぎ役・3女の夏帆も好感が持てた。

 彼女たちが住む古い家の佇まいが似合う鎌倉の四季に心癒され、シラス丼、アジフライ定食などの鎌倉グルメに思わず舌なめずり。そして、脇を固める俳優も皆素晴らしい。特に大叔母役の樹木希林は、公開中の「駆込み女と駆出し男」「あん」に続いての出演作公開。

 唯一残念だったのは、山形の温泉の場面は岩手県花巻や宮城県白石などでのロケで、山形での撮影がなかったこと。この4姉妹に山形でインタビューしたかった。


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荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。