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<荒井幸博のシネマつれづれ> 駆込み女と駆出し男

2015年5月8日
ロケ地と大泉洋が秀逸

 井上ひさしが晩年に11年をかけて執筆した時代小説「東慶寺花だより」を、「突入せよ!『あさま山荘』事件」「クライマーズ・ハイ」など骨太な作品を世に送り出してきた原田眞人監督が初めて手がける人情時代劇。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 駆込み女と駆出し男

 時は江戸末期。夫による家庭内暴力やモラハラが当たり前のようにまかり通っていた当時、幕府公認の縁切寺・東慶寺には複雑な事情を抱えた女たちが離縁を求めて次々に駆け込んでくる。
 そんな女たちの聞き取り調査を行う御用宿・柏屋に居候する戯作者志望の医者見習い・信次郎(大泉洋)は、さまざまなトラブルに巻き込まれながらも訳あり女たちの人生の再出発を応援するため奮闘努力するが…。

 訳あり女に戸田恵梨香、満島ひかり。粕屋の主人・源兵衛の樹木希林のほか山﨑努、堤真一らが脇を固める。キムラ緑子は言うに及ばず、神野三鈴、陽月華、松本若菜らの演技も素晴らしい。
 特筆すべきはやはり大泉洋。セリフまわしの滑らかさ、身のこなしの良さは「幕末太陽伝」で居残り佐平次を演じたフランキー堺をほうふつさせる。ヤクザの親分役・橋本じゅんとの丁々発止のやり取りは白眉(はくび)。

 原田監督に話を伺うと、「15編のエピソードから成る原作の映画化は難しいと思ったが、『ラストサムライ』に出演した際に知った壮大な圓教寺(兵庫県姫路市)ロケが活きる作品だと閃いた。大泉洋の起用もすぐに頭に浮かんだ」とのこと。
 狙いは見事に当たったといえる。監督の演出手腕を称えると、「圓教寺のほか、ロケに使った妙心寺(京都)、随心院(京都)、教林坊(滋賀県近江八幡市)などの凄い施設に役者たちが負けまいと頑張った賜物」と謙虚な答えが返ってきた。
 他にも黒澤明、溝口健二、衣笠貞之助、ハワード・ホークス等々、偉大な先人たちの作品を如何に参考にしたかなど言葉がほとばしるのでした。
 井上ひさしさんが亡くなって4月9日で5年になることに気付いた。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 駆込み女と駆出し男
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。