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<荒井幸博のシネマつれづれ> バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

2015年4月10日
長まわし(?)映像が見事

 かつてスーパーヒーロー映画「バードマン」で主役を演じ一世を風靡(ふうび)したリーガン・トムソン。だが以後はヒット作に恵まれず、気がつけば60代に。
 荒んだ暮らしぶりから妻に離婚され、娘のサムは父を軽蔑してドラッグに依存していた。

<荒井幸博のシネマつれづれ> バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

 リーガンは捲土重来(けんどちょうらい)を期し、レイモンド・カーヴァーの短編小説「愛について語るときに我々の語ること」の脚色、演出、主演でブロードウェイの舞台に挑もうとする。
 本公演前のプレビュー公演が迫る中、代役の実力派俳優の才能に脅(おびや)かされたリーガンは精神的に追い込まれ、プレビュー公演は散々な結果に。
 楽屋には過去の栄光「バードマン」の大きなポスターが貼られているが、バードマンはいつしかリーガンにとりつき、大きな羽根を広げてリーガンに本公演をやめるようささやきかける。果たして本公演は――。

 リーガンを演じるのは「ビートルジュース」(公開1988年)で名を上げ、翌年「バットマン」で主演を演じてトップスターの仲間入りを果たしたマイケル・キートン。
 続編「バットマン リターンズ」(同92)も大ヒットしたが、以降は低迷。現在63歳。「当て書き」とさえ思えるほど主人公リーガンとマイケルは重なる。

 リーガンを追い込む実力派俳優を「真実の行方」「ファイトクラブ」などのくせ者俳優エドワード・ノートン、下積みの長い女優をはまり役のナオミ・ワッツが演じる。
 第87回アカデミー賞で作品、監督、脚本、撮影の4冠に輝いたが、マイケルが主演男優賞を逃したことは意外で、残念だった。全編長まわし、ワンカットかと見紛うほどの撮影・編集も見事。

 若くて力がある時には肩で風切って歩き、天狗になりがち。そこで見えなかった風景が年を重ね、衰え、不遇になると否応なく見せ付けられる現実。だからこそ、われわれ中年オヤジはリーガンの頑張りに快哉(かいさい)を叫びたくなる。


<荒井幸博のシネマつれづれ> バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。