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<荒井幸博のシネマつれづれ> ジヌよさらば~かむろば村へ~

2015年3月27日
龍平の喜劇センスに脱帽
 過疎化の進む東北の寒村「かむろば村」に1人の青年がやって来た。彼の名は高見武晴(松田龍平)。銀行員時代の辛い経験から“お金恐怖症”になった彼の目的は「お金を一円も使わずに生きていくこと」だった。
<荒井幸博のシネマつれづれ> ジヌよさらば~かむろば村へ~

 村には、口は荒いが何かと世話を焼いてくれる村長(阿部サダヲ)とその美人妻(松たか子)、村人から神様と崇(あが)められている老人(西田敏行)、ピントのずれたヤクザ(荒川良々)など強烈な個性を持ち、ひと筋縄ではいかない人がいっぱい。そんな彼らと向き合ううち、武晴の人生は思わぬ方向へ走り出していくのだった――。
 原作は仙台市在住の漫画家・いがらしみきおの「かむろば村へ」。ちなみに「ジヌ」は東北弁の「銭」で、撮影は福島県柳津町(やまいづまち)で行われた。 
 先日、松尾スズキ監督と松田龍平さんに話を伺う機会に恵まれた。

 自らも不気味なヤクザ役で出演している松尾監督は「以前からいがらし作品のファンで、人間のどうしようもないグロテスクな部分の中にシュールな笑いがある。自分の芝居にも通じるから映画化の話をいただいたのだと思いますが、二つ返事で引き受けました」
 初監督作品の「恋の門」以来11年ぶりにタッグを組んだ龍平さんについては「ギャグをやりそうにない雰囲気の役者がいいと思い、『あまちゃん』で共演して成長を肌で感じた龍平君にお願いしました」

 龍平さんは「お金恐怖症をどう演じるかは自分任せでしたが、どんな症状なのか、お金にどこまで近づけば失神するのかなど、かえって難しかった」と話してくれた。
 松田龍平はクールなイメージが強いが、へタレで情けない恐怖症ぶりには大いに笑わせられた。実はコメディセンスにも秀(ひい)でていて、それは阿部サダヲなど松尾主宰の劇団「大人計画」所属俳優や西田敏行など喜劇陣に囲まれても異彩を放っていたことからも伺える。
 松尾監督の狙いは見事的中!


<荒井幸博のシネマつれづれ> ジヌよさらば~かむろば村へ~
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。