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<荒井幸博のシネマつれづれ> 椿三十郎~名作を敢えてリメイク

2007年7月13日
 「やまコミ」読者の皆さん、はじめまして。荒井幸博と申します。
 小学生の頃、『裸の大将』や『路傍の石』などを映画教室で観て、映画館の暗闇に身を沈めてスクリーンに映し出される物語を体全体で味わう喜びを覚えました。
 クラーク・ゲーブル、ビビアン・リー、オードリー・ヘップバーン……。スクリーンで躍動するヒーロー、ヒロインに憧れてきました。基本は「ミーハー」です。
<荒井幸博のシネマつれづれ> 椿三十郎~名作を敢えてリメイク
 そのミーハー男が、いつの間にかラジオなどで映画を紹介するようになっていました。開映のベルが鳴り、場内が暗くなると訳も分からず気分が高揚し、スクリーンに光が映し出される瞬間を待つワクワク感は今も変わりません。時代や国境を越えて映画の世界にどっぷりと浸る喜びを少しでもお伝えできればと思います。

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 子どもの頃のヒーロー・三船敏郎主演の「椿三十郎」(黒澤明監督・ 1962年公開)が46年ぶりにリメイクされ、12月1日から公開される。藩の上役の汚職に気づいた若侍9人が悪を駆逐するために決起しようとするが、その密談をたまたま聴いていた素浪人・椿三十郎がヤワで危なっかしい彼らを放っておけず、反発を買いながらも指南し、導いていく。
 三十郎と若侍、城代家老夫人とのユーモラスなやりとりと、一転してラストの仲代達矢演じる室戸半兵衛と三船演じる三十郎の殺気あふれる決闘場面が何度見てもゾクゾクする快作。
 これは山本周五郎原作「日々平安」を黒澤明、菊島隆三、小国英雄が脚本化して黒澤明がメガホンをとったもので、キャストも三船、仲代のほか、志村喬、入江たか子、加山雄三、平田昭彦、田中邦衛と、これ以上は考えられないという布陣。
<荒井幸博のシネマつれづれ> 椿三十郎~名作を敢えてリメイク
 そんな既存の傑作をリメイクするというのはリスキーな行為でもある。そのリスクに敢えて挑んだのは角川春樹プロデューサーと森田芳光監督。三船が演じた三十郎に織田裕二、仲代の室戸半兵衛に豊川悦司。脚本はオリジナルをそのまま使用したので、いやが上にも「比較」との闘いが待っている。
 今の映画人が、日本映画全盛の映画人の仕事に挑んだとも言える新「椿三十郎」の公開を楽しみに待ちたい。
 ちなみに、7月14日(土)に米沢市伝国の杜で開催される『田中邦衛映画祭』で邦衛さん所蔵の「椿三十郎」の台本が展示されます。