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<荒井幸博のシネマつれづれ> アゲイン 28年目の甲子園

2015年1月9日
青春を蘇らせる中高年

 今月17日から「アゲイン 28年目の甲子園」が公開される。

<荒井幸博のシネマつれづれ> アゲイン 28年目の甲子園

 46歳の坂町(中井貴一)は元高校球児だが、白球を追った時代はもはや遠く、仕事への張りも失くしていた。離婚した妻が亡くなって以来、一人娘の沙奈美(門脇麦)とも絶縁状態。
 そんなある日、坂町のもとを高校時代のチームメイト松川の娘・美枝(波瑠)が訪れ、没交渉だった松川が東日本大震災で亡くなったことを知らせる。彼女は父親の遺品の中から全チームメイトに宛てた27年分の年賀状の束を見つけ、なぜそれを投函せずにいたのかを知りたがっていた。

 元高校球児が再び甲子園を目指す「マスターズ甲子園」の事務局で活動する美枝は、坂町に大会への参加を持ち掛ける。
 美枝の強引な勧誘に辟易(へきえき)しつつもチームメイトと再会し、松川の年賀状の束を見せて参加の意思を聞いたところ、皆の顔が曇る。無理もない。実は坂町たちが甲子園に行けなかった原因は松川にあったのだ。
 28年前、松川が起こした事件によって夢を断たれた坂町は、自らの思いにフタをしたつもりでいた。それは投手の高橋(柳葉敏郎)も同様。甲子園に出てさえいればプロに行っていたと、リストラで不遇な現状をあの夏のせいにしていた。

 だが父親の面影を追い求める美枝と接するうち、坂町は娘と正面から向き合うことをせず、逃げてきたことに気付く。現実と折り合いをつけ、思い出を消し去ることで自らを騙(だま)し続けてきた自分。「あの夏に決着をつけなければ前へは進めない」。坂町は甲子園への参加を決意する――。

 中井、柳葉、和久井映見らベテランに伍して若手の波瑠、門脇麦、大賀、工藤阿須加らが好演。
 主題歌は自身も高校球児だった浜田省吾が初めて映画主題歌を書き下ろした10年ぶりの新曲「夢の続き」。キャッチボールを通じた父から子への愛を歌いあげている。


<荒井幸博のシネマつれづれ> アゲイン 28年目の甲子園
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。