徹底して山形に密着したフリーペーパー

<荒井幸博のシネマつれづれ> そこのみにて光輝く

2014年11月14日
菅田将暉の演技に注目

 以前、今年だけで主演3作、準主演5作が公開される池松壮亮(24)の活躍ぶりを紹介したが、「寄生獣」(公開11月29日)の染谷将太(22)、「神さまの言うとおり」(同11月15日)の福士蒼汰(21)、「るろうに剣心」の神木隆之介(21)と、池松より若い俳優たちの台頭も著しい。彼らと同世代で個人的に最も注目しているのが菅田将暉(21)だ。

<荒井幸博のシネマつれづれ> そこのみにて光輝く

 昨年度後半のNHK朝の連続テレビ小説「ごちそうさん」でヒロインの長男役を爽やかに演じたと思ったら、モントリオール世界映画祭最優秀監督賞に輝いた呉美保監督「そこのみにて光輝く」(公開11月8日)では底抜けな明るさの奥に潜む危うさを見事に表現している。
 拓児(菅田)は世捨て人のような達夫(綾野剛)とパチンコ屋で出会って意気投合、汚い自宅に連れ帰る。寝たきりの父親と介護に疲れ果てた母親と姉(池脇千鶴)が迷で、拓児の育ちや性格、家族の置かれた状況までが透けて見える。主役は綾野と池脇だが、気がつけば菅田から目が離せなくなってしまっていた。
 火野正平、伊佐山ひろ子、高橋和也ら脇を固めるベテラン勢も良く、登場人物の汗や息遣い、悩み、喜び、痛み、希望が直に感じられる作品。

 菅田は能年玲奈主演「海月姫」(公開12月27日)では打って変わって女装の美男子を演じ、その可愛らしさ、美しさが話題になっている。
 菅田ほか冒頭で紹介した若手陣に加え、三浦春馬、佐藤健、高良健吾、岡田将生、東出昌大、窪田正孝、松坂桃李、永山絢斗など20代の楽しみな俳優が目白押し。
 70年代、萩原健一、松田優作、水谷豊、柴田恭兵、中村雅俊、草刈正雄らが割拠していたころを懐かしく思い出す。


<荒井幸博のシネマつれづれ> そこのみにて光輝く
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。