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<荒井幸博のシネマつれづれ> グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札

2014年10月24日
知られざる公妃の素顔
<荒井幸博のシネマつれづれ> グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札

 本作の主人公である故グレース・ケリーは1950年代のハリウッド映画で人気を博した女優で、同時代の女優マリリン・モンローの明るさとセクシーさとは対照的に、気品に満ちた美貌から「クール・ビューティー」と賞美された。
 人気絶頂のさなか、モナコ大公レーニエ3世に見初められ、女優業を引退して結婚。まだ26歳でこれから女優として大輪の華を咲かせようとしていた矢先だっただけに、世界中のファンを大いに失望させたものだ。

 本作は世紀の結婚から6年後、62年のモナコが舞台。思ったことをはっきり言うグレースは皇室や社交界で孤立し、夫とも口論が絶えない日々を送っていた。そんな折、ヒッチコック監督から次回作「マーニー」への主演依頼を受け、大きく心を動かされる。
 時あたかもモナコは政治的危機に直面していた。アルジェリア独立戦争で戦費を必要とするフランスがモナコに過酷な課税を強要し、ド・ゴール大統領が「従わなければモナコを属国にする」と宣言したのだった。

 国家の危機を前にハリウッド復帰を断念したグレースは立ち上がる。公妃として生涯で最高の難役を演じることを決意、モナコの歴史や公妃の作法などを徹底的に学び始める。
 そしてフランスがモナコに侵攻しようというまさにその時、各国要人を招いた晩餐会の席上でグレースは一世一代のスピーチを披露する。それは国を救い、家族を守るためだけではなく、見失った自分自身を取り戻すスピーチだった――。

 本作はグレース・ケリーのシンデレラ物語ではない。あの時、モナコ公国で何があったのか、グレース公妃は、レーニエ3世は、ド・ゴール大統領はどう振舞ったのか。それらを的確に描いたサスペンス・タッチの作品。
 現在のハリウッドでクールビューティーの代表ともいえるニコール・キッドマンがグレース公妃を、夫レーニエ3世を巧者ティム・ロスが好演。


<荒井幸博のシネマつれづれ> グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。