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<荒井幸博のシネマつれづれ> 蜩ノ記

2014年10月10日
師弟・夫婦・家族の愛
<荒井幸博のシネマつれづれ> 蜩ノ記

 舞台は豊後・羽根藩。藩士の檀野庄三郎(岡田准一)は僻村(へきそん)に幽閉中の元郡奉行・戸田秋谷(役所広司)の監視を厳命される。秋谷は7年前、前藩主の側室と不義密通を働き、小姓を斬り捨てるという前代未聞の事件を犯していた。その罪により10年後の切腹と、切腹の日までに藩の歴史である家譜の編纂(へんさん)を命じられていた。
 庄三郎は秋谷やその家族と生活をともにするうち、清廉な秋谷に敬愛の念を抱くようになり、その無実を確信する。秋谷を救うべく真相を探り始めると、事件の裏に隠された正室の出自に関する重大な疑惑が浮上する。

 メガホンを執った小泉堯史監督は故・黒澤明監督に師事し、黒澤亡き後の2000年、遺作シナリオ「雨あがる」で監督デビュー。以来、黒澤組スタッフと3作を送り出してきた。本作は満を持しての6年ぶりの新作。
 先月、キャンペーンで仙台を訪れた小泉監督と主演の役所広司さんに話を伺う機会に恵まれた。
 意外なことに2人は初顔合わせ。「秋谷役は役所さんしかいないと思い出演をお願いしました」(小泉監督)、「以前から小泉監督の作品に出たいと思っていたので無条件でお受けしました」(役所さん)と舞台裏を明かしてくれた。
 岡田准一のほか原田美枝子、寺島しのぶ、掘北真希らも適材適所の配役で、師弟愛、夫婦愛、親子愛など様々な角度から感動できる作品。岩手県遠野など東北を中心としたロケ地の四季の風景も重要な役割を担う。

 キャンペーンといえば、「ふしぎな岬の物語」で吉永小百合さんと笑福亭鶴瓶さんも先月末に来形。吉永さんは55年の映画人生で初めて企画から参画、鶴瓶さんほか主要キャストは自らオファーする力の入れようで、その想いが見事に結実した作品。
 今年の秋は「蜩ノ記」(東宝)、「ふしぎな岬の物語」(東映)、中井貴一主演「柘榴坂(ざくろざか)の仇討ち」(松竹)を加え、大人の秀作が大手3社で出揃ったのが嬉しい。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 蜩ノ記
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。