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<荒井幸博のシネマつれづれ> アバウト・タイム~愛おしい時間について~

2014年9月26日
愛と幸せの本質とは

 致命的な失敗をしたり、不幸な目にあったりした時、「時計の針が(それ以前に)戻せたら…」と思ったことはありませんか?

<荒井幸博のシネマつれづれ> アバウト・タイム~愛おしい時間について~

 イギリス南西部で風変わりな両親と妹、そして伯父の5人家族で暮らす青年ティムは自分に自信が持てず、恋人ができないでいた。迎えた21歳の誕生日、ティムは父親から秘密を告げられる。それは一族の男子にはタイムトラベルの能力を持っているというものだった。
 能力の使い方を覚えてからは恋人づくりのためタイムトラベルを繰り返すようになるティム。それでも初恋をものにすることができない。
 弁護士を目指すティムはロンドンへ移住、そこで出会ったメアリーに恋をする。タイムトラベルを駆使し、恋を成就させて晴れてメアリーと結婚。子どもも生まれ、幸せな家庭を築くが、それでも家族に不幸は押し寄せてくるのだった――。
   
 仮に時計の針が戻せたとしても、家族を襲う不幸や波風は回避できず、「普通の生活」がどれほど素晴らしく、その時々にベストを尽くすことがどれだけ大切かといった至極当然のことに気づかせてくれる。
 メガホンを執ったリチャード・カーティス監督は脚本家として「フォー・ウェディング」「ノッティングヒルの恋人」「ブリジット・ジョーンズの日記」などを手がけ、2003年の「ラブ・アクチュアリー」で監督デビューを果たした。
 作品で分かるようにロマンティック・コメディはお手のもので、本作もこの系譜に連なるが、驚くことに58歳の若さで監督を引退するとか。

 主人公の父親役のビル・ナイはカーティス監督おなじみの俳優。飄々(ひょうひょう)とチャーミングに演じてくれたが、特に息子の結婚パーティのスピーチにはホロりとさせられた。
 「いくら失恋続きでも、そもそもこんな父親がいたんだから幸せじゃないか!」とティムを妬ましく思った次第でした。
 ちなみにアバウト・タイムとは「その時はきた」という意味。


<荒井幸博のシネマつれづれ> アバウト・タイム~愛おしい時間について~
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。