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<荒井幸博のシネマつれづれ> イン・ザ・ヒーロー

2014年9月12日
全映画人へのエール
<荒井幸博のシネマつれづれ> イン・ザ・ヒーロー

 ヒーローや怪獣の特殊スーツに身を包み、素顔で役を演じることのないスーツアクターを25年続けている本城渉(唐沢寿明)。キャリアを重ねるも顔出しでの映画出演はかなわず、3年前には妻子にも逃げられてしまう。
 ようやく巡ってきたヒーロー番組の映画版への出演話も若手の新人手・一ノ瀬リョウ(福士蒼汰[そうた])に役をさらわれる始末。
 そんな本城にハリウッドのアクション大作からオファーが舞い込む。千載一遇のチャンスだが、それは命がけの危険で無謀なスタントだった――。

 主人公を演じる唐沢寿明は51歳。ブルース・リーのようなアクション俳優を目指して高校を中退、スーツアクターとして俳優の道を歩き出したのが16歳の時。顔と名前の出る役を求めてオーディションを受けまくるが、ことごとく落ち続け、長い下積み時代を経験しているところは本城と重なる。
 オーディションに臨む際の唐沢のファッションは20代半ばまで革ジャンにジーンズ。これをポロシャツとチノパンの爽やか路線に変更したところ何と一発合格!その後1992年のテレビドラマ「愛という名のもとに」で一気にブレイクしたのはご存知の通り。
 以後も「利家とまつ」(2002年)、「白い巨塔」(03年)、「不毛地帯」(09年)、「ルーズヴェルト・ゲーム」(14年)など話題作に次々に主演、唐沢は今や押しも押されぬ名優といっても異論はないだろう。

 そんな唐沢が30年ぶりに原点に返り、肉体を鍛え直して危険なスタントに挑む。この作品はもう一人の唐沢寿明の物語と云える。クライマックスで17分間もの壮絶な殺陣とアクションは圧巻。
 やはりスーツアクター経験のある寺島進はじめ黒谷友香、和久井映見、小出恵介、及川光博、加藤雅也らが脇を固め、松方弘樹が本人役で出演。
 本作はスーツアクターやスタントマン、エキストラだけでなく、カメラ、照明、衣装など映画に携わる全ての人にエールを贈る作品である。


<荒井幸博のシネマつれづれ> イン・ザ・ヒーロー
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。